文字を食べる

読書の備忘録ブログです。

草野たき『マイブラザー』

  当サイトの記事には、広告・プロモーションが含まれます

装画:佳奈

1年くらい前のまとまりのない感想を無理やりまとめたので読みづらいです。

夢も友だちもなく、5歳児の弟の面倒を見る毎日――イクメン中学生・海斗の迷走と目覚めを描く、笑って泣ける成長小説。
https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/8001058.html


家族の事情をきっかけに中学受験を諦めて、歳の離れた弟の世話をすることになった中学生の主人公。…ということで、最近よく聞く「ヤングケアラー」の話かと思ったけど違った。

主人公は中学2年生の男の子。小学生までは塾に通い、私立中学を目指していたけれど、一流大学を出て電気自動車研究をしていた父親が脱サラし、パン屋になるための修行をすることを決意したのを機に、親の説得も聞かずにすべてを諦めることに。
それからは歳の離れた弟の総也の世話をして過ごしている。でもそれは学校での面倒ごとから離れるための言い訳にできるという理由があった。

中学生はとても忙しい。家族のこと、将来のこと、考えることもたくさん。
挫折を感じたり、息苦しさを感じたり…。いろいろあるけれど、自由奔放な5歳児の姿にいろいろ思うところができて、もっとわがままになってもいいかなと思ってみたり、やりたいことをやってみようと思ってみたり…。中学生のフクザツな心中が丁寧に描かれている。

父親がパン屋になりたいと思ったきっかけが作中にでてくる絵本。この『パン屋のクマじーさん』に対する主人公の海斗のつっこみには笑ったけど、毎日パンを焼いて誰かにそれを食べてもらう、という地味だと言われたその暮らしはなかなか悪くないもののように私には思えた。

確かに総也みたいに泣きわめきたくなることはある。きっとすっきりすんだろうな。
明るいラストでよかった。同じ保育園卒園組の5人は今後も付き合いが続きそうだ。いい友達が近くにいて何より。
おかしくて、ちょっとしんみりもする良い話だった。

読書感想文に良さそうです。