文字を食べる

読書の備忘録ブログです。

新川帆立『元彼の遺言状』

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宝島社文庫
カバーイラスト:丹地陽子
カバーデザイン:菊池祐
本文DTP:株式会社明昌堂


亡くなった元彼は誰かに殺された!?
犯人だけがその財産を譲り受けられるという奇妙な遺言を受け、
女性弁護士が依頼人と共謀して分け前を狙う破格の遺産相続ミステリー!
https://tkj.jp/campaign/motokare/


第19回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作
人気作でタイトルは知っていて、いつか読みたいとは思っていたが、先月Youtubeの「有隣堂しか知らない世界」というチャンネル内で見た動画で作者本人が出演して、小説のことを話していたのを見て興味を持って今更ながらに手にとった。

おもしろく、読みやすく一気に読んだ。
主人公は28歳の敏腕弁護士、剣持麗子。大手事務所に所属。冒頭で恋人から婚約指輪(カルティエのソリテールリング)を贈られるものの「安直すぎ」「ダイヤが小さい」と一刀両断。「あなたへの私への愛情は、世間の平均程度ってこと? そもそも私は、自分が世間の平均どおりの女だと思ったことはないし、平均が四十万円だとしたら、百二十万円の指輪が欲しいの」(p10)なんて言ってしまうような人。お金にとても貪欲で、ボーナスの減給の件で事務所と喧嘩してしまうし、元彼の遺言状の件で知人からの妙な依頼も請け負ってしまう。

タイトルにもなっている「元彼の遺言状」がそもそもの話の発端。麗子の3つ前の元彼、森山栄治の「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という奇妙な内容の遺言状の謎を解き明かしていく物語。麗子は依頼人の代理人として犯人選考会に参加する。
主人公のキャラがかなり強烈だったが、それがかえって清々しい。自分の能力きちんと理解しているところもいいし、嫌いなもの苦手なものに対してもちゃんと対峙し、良いものは良いと言えるところは素敵だと思った。事件を通して成長していく姿が見られるのもよい。

元彼が森川製薬という大会社の社長の息子ということで、彼の身内キャラの登場が多い。でもそれぞれキャラが立っている。
森川栄治の死因、遺言状の意図、遺言状を管理していた弁護士殺人の犯人…。これらの謎が作中に散りばめられた伏線から回収されていくさまが見事。意外な犯人と真相に驚いた。そういうことだったのか。
麗子は意外に町弁護士みたいな感じも向いてそう。法律知識はほとんどなかったけど、難しく考えずに読めた。さわやかな読後感だった。

目次

第一章 即物的(ザッハリッヒ)な世界線
第二章 中道的(メソテース)な殺人
第三章 競争的贈与(ポトラッチ)の予感
第四章 アリバイと浮気のあいだ
第五章 国庫へ道連れ(タグ・アロング)
第六章 親子の面子(ペルソナ)
第七章 道化(ピエロ)の目論見


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tkj.jp


綾瀬はるか主演でドラマになっていたらしい。wikipediaみた感じ、小説とは結構違うみたい…。

ja.wikipedia.org