文字を食べる

読書の備忘録ブログです。

昔の読書記録まとめ 2

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昔の読書の覚書まとめ。 とんちんかんな感想あるかもしれない&どれも短い。
並びは大体読んだ順。

読書記録

村山由佳『永遠。』

生きることに無器用なひとなのね、それが私にはいとしかった――葉月さんは亡くなる前、娘の弥生と幼なじみの僕に話してくれた。かつて別れた恋人のことを。弥生はその男の向かいの部屋に住み、彼の講義を聴きに短大に通った。「お父さん」と、一度も告げられずに。卒業式の日、僕は弥生の帰りを待つ――。
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000204261


 ヒロインである弥生の母親、葉月は女手一つで夜の仕事をしながら彼女を育ててきた。葉月は何故愛し合っていたはずなのに別れてしまったのか。そんな感じの話。弥生の幼馴染の徹也の視点で語られています。映画「卒業」のサイドストーリーらしいです。愛に色々な形があるんだなあ、と感動しました。

 映画の方は見てないので知りませんが(というか、あったことも知らなかった)、この本だけでも楽しめると思います。ページ数も少なめなので、活字を読むのが苦手な人にも読みやすいかも。
 単行本の表紙には水色の小さい文字で「永遠。」と細かくたくさん書かれている。本を読んでいるときに、青系の色のページや四角形が目に飛び込んでくるのですが、それが良い効果を出しているように思った。

◯単行本



よしもとばなな『デッドエンドの思い出』

人の心の中にはどれだけの宝が眠っているのだろうか——。時が流れても忘れ得ぬ、かけがえのない一瞬を鮮やかに描いた傑作短篇集
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167667023


 作者も気に入っているという話。私も結構好きな感じだった。
 全体的に雰囲気は柔らかいんだけど、決して幸せだとはいえない話。だけど、不幸せだとも言い切れない話。よく御伽噺にあるような、不幸せな女の子が王子様と会って、という幸せというかドラマチックなものはないんだけど、日常の些細な事が幸せなんだよっていうのは、散りばめられていると思った。優しい話。

◯収録作品
幽霊の家
おかあさーん!
あったかくなんかない
ともちゃんの幸せ
デッドエンドの思い出


稲葉真弓『さよならのポスト』

森の中の緑のポストに届くさよならの手紙。そこにつづられたさまざまな別れがささやきかけてくるものは……。ポストを守るおじいさんのモノローグでつなぐ8話のファンタジー。
https://www.heibonsha.co.jp/book/b162465.html


 不思議な雰囲気を持つ短編集。1つ1つの話も全体的な長さもそんなに長くないので比較的簡単に読める。
 「さよなら」の話なので、寂しい感じの話が多いかと思いきや、なかには寂しいだけじゃなくて、明日への希望を持っているような、そんな話をポストに投函する人(動物)も。最初は人の書いた手紙を読むのか、とも思ったが、誰かに読んでもらいたいっていうのもあるのかも。
 ラストの緑のさよならのポストを守ってきていたおじいさん自身の話である「最後のあいさつ」の中の

「さよなら」を言うことは、新しい世界と時間への出発なんだよ。

という台詞(?)がなんか心に残っている。

◯収録作品
だれもいない森
星になったライオン
おばあさんの水晶
ネムのはなし
まてんろう
火山の町
昨日のわたし
夏の魔女



星野智幸『虹とクロエの物語』

全国学校図書館協議会選定図書

かつて唯一無二の友達だった、虹子と黒衣。40歳を迎え、行きづまりを感じ始めた彼女達は、もう一度、再会を試みるが!? 生への確かな肯定に満ちた星野智幸最高傑作。
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309017433/


 虹子・クロエ、他2名の4名の視点で物語は語られる。淡々とした文章。昔を懐かしむというか、どこか焦燥感の漂うような感じも受けた。
 虹子とクロエ、2人の間には言葉なんて必要なくて、相手の蹴ったボールを受けるだけで互いの気持ちがわかったりした。そんな時があった。しかし、ずっと2人そうしていられるはずもなく、2人は分岐点に立つ。主人公たちは40代で、更年期障害だとか、40代ならではの悩み(子育てとか、その他もろもろの焦りだとか)を持っているのだけが、いまいちピンとこなかった。やっぱり主人公達と同年代の人が読むのがいいのかも。

 ピンと来ないと言えば、ユウジの存在もなんか不思議だった。そこだけ、現実と切り離されているような。あとは、胎児の存在も。でも、ラストを読む限りクロエは胎児になんらかの事をしたと思われるのだけど。難しくて、一度読んだだけでは私には理解できなかった。



スティーヴン・ミッチェル『カエルも愛せば、王子になれる』

 一般的に広く知られている「カエルの王子」という童話をもとにした恋愛心理童話。「カエルの王子」は小さい頃に呼んだ記憶はあるが、詳しくは覚えていなかった。だけど、その点は訳者の後書のページに内容の要約が載っているので、本編を読む前に確認しておくというのもありかも。
 この作品、「カエルの王子」で語られずに省かれた部分を詳しく書いたみたいなことが書いてあったけれど(もっと違うニュアンスだったかもしれない)私は「カエルの王子」が長くなった話くらいにしか思いませんでした。決定的な違いといえば、姫がカエルを王子だと最初から思い込んでいたこと、王妃が姫とカエルとの交渉に不安(不満?)を抱えたことくらいか。童話の方の姫はなんか我侭な感じは受けるけど、こっちの姫にはそういったものはそんなに感じなかった。というか、感性の問題なのか正直よくわからなかった。

図書カード:かえるの王様(青空文庫)



辻村深月『鍵のない夢を見る』

普通の町に生きるありふれた人々にふと魔が差す瞬間、転がり落ちる奈落を見事にとらえる5篇。現代の地方の姿を鋭く衝く短篇集
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163813509


 第147回直木賞受賞作。
 女性視点で描かれた短編集。共感するところもあったり。(まあ、全然気持ちわからん、というのもあったけど)実際に起こり得そうな話もあり、なんかぞっとしました。「君本家の誘拐」の主人公である主婦の立場になったら、相当混乱しちゃいそう。いろんな意味で恐ろしいです。

◯収録作品
仁志野町の泥棒
石蕗南地区の放火
美弥谷団地の逃亡者
芹葉大学の夢と殺人
君本家の誘拐

◯単行本の表紙も好き



川崎徹『猫の水につかるカエル』

静かなユーモア・優しいペーソス、淡々と沁みる小説集。「父母の、友の、猫の、己の死を深く見つめる作者の眼差しが、今ここにあるかけがえのない生に向けられる時、すべての事物が記憶を語りはじめる――。
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000185600


 可愛らしい猫の表紙に惹かれて読み始めたが、表紙で受けた印象とは違ったなんともしんみりとした哀愁漂う話だった。2編収録されているが、どちらの話も家族(主に父の死)の回想とともに主人公が死について考える、というもの。こちらも色々と考えるところがあった。
 「猫の水につかるカエル」は猫用の水のみに浸かっているカエルの親子が愛らしい様子に書かれていたが、主人公と猫の心中についての対話は切なかった。

◯収録作品
傘と長靴
猫の水につかるカエル



三秋縋『三日間の幸福』

原題:『寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。』

未来を悲観して寿命の大半を売り払った俺は、僅かな余生で幸せを掴もうと躍起になるが、何をやっても裏目に出る。空回りし続ける俺を醒めた目で見つめる、「監視員」のミヤギ。彼女の為に生きることこそが一番の幸せなのだと気付く頃には、俺の寿命は二か月を切っていた。
https://mwbunko.com/product/311978700000.html


 タイトルの「三日間の幸福」については本編では語られることはなかったが、クスノキとミヤギはどんな三日間を過ごすのだろう。二人にとっては言葉にしようもないほどの幸せな日になったのだ、ということは確かのようなのでよかったけれど。なんかもう愛ですね、って感じだった。


【Renta!】寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。 全3巻|三秋縋、田口囁一、E9L、集英社、ジャンプコミックスDIGITAL



木村紅美『イギリス海岸 イーハトーヴ短篇集』

 盛岡の宮沢賢治ゆかりの地が多々登場する短編集。宮沢賢治好きは読んでてにやりとできるかも。
 一卵性の双子の姉妹とその周辺の人物がそれぞれの話の主人公。どれもどこか郷愁を感じさせるもので、ほんのりと温かな話ばかりで。盛岡の自然とか東京の都会って感じとか、描かれる空気が好きだなあと思う。特別おもしろい!という内容ではないけど、読後感が良かった。
 短編のイチオシは「福田パン」。切なさの中の温かさにぐっときた。あと、福田パンを無性に食べてみたいと思った。

◯収録作品
福田パン
イギリス海岸
中庭
ソフトクリーム日和
帰郷
クリスマスの音楽会



三浦しをん『舟を編む』

玄武書房に勤める馬締光也。営業部では変人として持て余されていたが、人とは違う視点で言葉を捉える馬締は、辞書編集部に迎えられる。新しい辞書『大渡海』を編む仲間として。
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334927769


 おもしろくて一気に読みました。辞書編纂という題材が興味深かったです。言葉っておもしろい。辞書の見方が少し変わりそうです。本の装丁がとても好みだったんですが、終盤にこれが表しているものを知り、ちょっと感動でした。いい装丁だなあ。
 料理描写が気になるものとしては、板前な香具矢さんが作る料理はおいしそうでした。

◯単行本の表紙がやっぱり好き

舟を編む

舟を編む

  • 松田龍平
Amazon

 アニメや映画になっているのは知っていたけど、ドラマにもなっていたとは知らなかった。本当に人気の作品なんだなあ。

【Renta!】舟を編む 全2巻|三浦しをん、雲田はるこ、講談社、ITAN