文字を食べる

読書の備忘録ブログです。

近藤史恵『それでも旅に出るカフェ』

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装丁:鈴木久美
カバー写真:川しまゆうこ
料理製作:林周作(郷土菓子研究社)

世界のさまざまなカフェメニューを提供する、カフェ・ルーズ。円が営むカフェもコロナ禍の影響を受けていて……。日常のちいさな事件や、モヤモヤすることを珍しいお菓子が解決していく。「こんなカフェに行きたい!」の声続々のコージーミステリー第二弾。
https://www.futabasha.co.jp/book/97845752461930000000


 『ときどき旅に出るカフェ 』の続編。連作短編集。前作とても楽しんだので今回も期待しつつ読んだ。
 今回も世界各地のおいしそうなスイーツや料理がたくさん出てきて、旅をしているような気分は少し味わえた。ただコロナやウクライナ侵攻などの時事ネタも多く、ちょっと気が滅入った。語り手の瑛子がすごく真面目だから余計に閉塞感があるのかな。彼女のコロナへの気遣いはほぼ自分と同じだから、小説の中でもコロナか…と思ってしまうのかも。
 そんな現実だからか、切実な感じの登場人物が多かった気もする。でも、そういうどうにもならない現実問題があるからこそタイトルに「それでも」がついたのかなあとなんとなく思った。

 途中までは店に来たお客さんの悩みをカフェ・ルーズの店主である円の料理で解決していくという感じだったのが、偉そうなおっさん(高見)が出てきてから雲行きが怪しく…。私もつい「私なんて」と自分を卑下しがちだけど、これは確かに自分にも周りにもよくない。かといって簡単に自信が持てるようになるわけではないので、その一言をぐっとこらえたいと思う。作中に登場した箱崎さんのことが好きになれなかったから、余計にそう思う。彼女もある意味かなしい人なんだろうけど。無意識で向けられる悪意への対処は難しい。
 ラストは有耶無耶な感じで消化不良感があるけど、また続編あるのかな? なんにしても、カフェ・ルーズならなんとかなりそうと思わせるラストではあった。

 表紙のケーキがすごくおいしそうだと思ったけど、話を読み進めていったらスロベニアの「ブレッドクリームケーキ」というお菓子だとわかった。今作で一番食べてみたい食べ物。
表紙のケーキは林周作さんという方が作ったものだとのこと。郷土菓子研究社ってどこかで聞いたなと思ったら、以前読んだ『世界の郷土菓子』のだった。このシリーズにぴったりな感じ。

メニュー(目次)

再会のシュークリーム
リャージェンカの困難
それぞれの湯圓
湖のクリームケーキ
彼女のためのフランセジーニャ
鳥のミルク
あなたの知らない寿司
抵抗のクレイナ
クルフィの温度
酸梅湯の世界

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