文字を食べる

読書の備忘録ブログです。

ジュリー・ベリー『聖エセルドレダ女学院の殺人』

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訳:神林美和
装画:姫野はやみ
解説:大矢博子
創元推理文庫

十代の少女7人が在籍する小規模な寄宿学校で、ある日の夕食中、校長先生とその弟が突然息絶えてしまう。それぞれの事情から家族の元へ帰されたくない生徒たちは、敷地内に死体を埋め、事実を隠して学校生活を続けることにする。
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488268046


 いつも以上にネタバレ注意。気持ち程度に文字色を白にしてみました。

 1890年代ビクトリア朝の終わり頃のイギリス。
 イーリーにある10代の少女が在籍する小規模な寄宿学校(いわゆる花嫁修業するような学校。フィニッシュスクール)で、ある日の夕方、校長とその弟が突然死んでしまう。死因は毒。それぞれの理由で家に帰りたくない少女たちは機転のキティを中心に死体を隠し、今までどおりの生活をしようとする…。自分たちの自由のために。
 いろいろ無理がある! と思ったけど、解説にもあったように時代やら何やら考えるとまあそういうこともあるかも? と思う。YA向けでもあるし。

 死体を隠すところ、死んだ校長が生きているかのように振る舞うこと(たくましいアリスに陰気なエリナが化粧をほどこし人の目を欺く)、なかなかスリルがあり、ドキドキハラハラした。
 少女らしからぬことをしたかと思えば、10代の少女たちらしく恋をしたり、さじ加減がいい感じだった。少女たちの個性がみんなバラバラなのがいい。それなのにうまく言っているのもいい。
 途中、思わぬ登場人物(インドにいるはずの校長の甥。かわいいジュリアスは青年だった)が出てきたり、ハプニングも多々。最終的にすべてバレて彼女たちの努力(まあ褒められたことではないが)も水泡に帰すのだけど、ミセス・ゴッディング(校長の義理の妹)が新しく校長になることですべて丸くまとまり、大団円? 機転のキティに春がしっかり訪れたようでニヤリ。それにしてもみんな空気を読むのがうまい。

 最初に登場しない人物の設定があり、斬新だと思った。でもそれがあることで本編に登場するキャラの裏事情などがわかり、話にも深みが増しているような気がする。
 本編もドタバタミステリでおもしろかった。犯人はメイドのアマンダ・バーンズだったが、やっぱりこの人、騙されてると思う…。