装画:原裕菜
装幀:名久井直子
上記は単行本情報。
単調でストレスフルな日々をキュートな妄想で脚色して何が悪い!
さまざまな世界との対峙の仕方を描く、衝撃の短編集!
村田沙耶香ワールドの神髄を堪能できる4篇を収録。
https://www.kadokawa.co.jp/product/321903000373/
36歳で魔法少女なんてやべーなと思って最初の表題作を読んでいたけど、面白すぎて一気に全部読んでしまった。現代ちょこちょこ聞く問題に独自の視点で切り込んだ感じ。皮肉が効いてる。
表題作が一番好き。リナの心の魔法少女は自分にも必要かもしれない。イラッとしたときも優しくなれる気がする。村田さんの本は初めて読んだが(まだコンビニ人間読んでない)、独特な世界観に引き込まれてしまった。もうなんというか、まみまぬんでら。
おもしろいとはいえ、万人受けする本ではないと思った。この本を読むには力が必要な気がするので、読む際は心身ともに元気なときがいいと思う。
収録作品と簡単な覚書
丸の内魔法少女ミラクリーナ
魔法少女(自分の妄想)をしている36歳のOLがひょんなことから友人の彼氏と一緒に魔法少女活動をする話。
トンチキすぎると思ったが、すごく良かった。こういうモラハラ男っているよなあ。正義とは何か? 初代マジカルレイミーによる「ミントスプラッシュ」連撃にはすっきりしてしまった。途中、魔法少女を辞めてしまったリナに悲しい気持ちになったけど、リナのミラクリーナが復活して嬉しい。
リナが魔法少女になるときに使っているフェイスパウダーがカネボウのミラノコレクションな気がして、読後に思わず買ってしまったのも良い思い出。初めて高価なパウダーを買ったけれど、私もなんだか少し強くなれる(魔法少女になれる)ような気がした。
秘密の花園
初恋の幻想を爆破するために、初恋の男の子を期間限定で監禁する大学生女子の話。
こいつもヤベー! 早川とかいう主人公の初恋相手がマジで好きになれなくて、なんでこんなのに甲斐甲斐しく世話なんてするんだよ! と思ったら…。
主人公の方が上手というかなんというか。ドンデン返し。そういうことかー! となりました。恋愛ってむずかしい。
無性教室
大学に入学するまでの学校ではトランスシャツというものを来て、見た目では性がわからないようにしなければならない、という校則がある世界線の話。
ジェンダーに切り込んだ感じの作品。男だから女だから好きなのか? 自分だけが女なんじゃないかと不安になるユート。性別ってなんだろう。性別関係なく誰かに恋をし、友達になる。そういうのちょっといいなと思う。現実もいずれはこんな世界になるのかな。ユキ視点の物語も読んでみたい。
変容
「怒り」を忘れた人たち。若者たちはセックスをすることもしない。
「怒り」の代わりの「悲しみ」…。怒りの方が体力使うから「悲しい」を使うのかな。なんともいえない。主人公の五十川さんへの執着がラストでわかった瞬間、よくわからなかった「なもむ」を理解し、「まみまぬんでら」。