文字を食べる

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安房直子『ひぐれのラッパ』

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絵:MICAO

歿後なお読者を魅了しつづける安房直子。本書は、小社の雑誌「母の友」「子どもの館」に発表された作品をあつめた、好評『ひぐれのお客』につづく、安房直子短篇集。
https://www.fukuinkan.co.jp/book/?id=1278


 優しく温かい話のようで、どこか物悲しく、恐ろしくもあるような話たち。すでに読んだことのある話もありましたが、挿絵があるとまた違って見えますね。刺繍の挿絵はどれも可愛く雰囲気あるし、話も素敵でした。

以下メモ。

◆収録
「猫の結婚式」

連作「とうふ屋さんの話」より

「ねずみの福引き」
 豆腐を提供する代わりにねずみの福引参加権をもらった豆腐屋さん。ねずみの間では5等の線香花火が人気らしく…。ねずみたちが一斉に楽しんだ線香花火の様子が幻想的で美しかった。

「ひぐれのラッパ」
 すすきが原を通るとうふ屋さんを呼び止める子どもの声。子どもたちは豆腐屋さんのラッパが好きだという。そんな子どもたちのためにラッパを吹いてやるが…。ラッパを吹いたときの空の様子の描写が綺麗。でも、子どもたちが消えた岩の奥の真実とかちょっと苦めの後味。かわいい話かなあと思いきや、子どもたちにラッパを吹いてやるたびに命を吸い取られていくのでは、みたいな描写があったり、少し怖い話でした。

「きつね山の赤い花」
 豆腐屋さんの娘さんが、きつねの子どもとおままごとをする話。ままごとで遊ぶ2人のもとに子ぎつねを迎えに来た母ぎつねがやってくるが、彼女は女の子のお家の豆腐屋から盗んできた油揚げを持っていた! 母ぎつねが女の子を誤魔化すために使うアイテムですが、椿の花のマニキュアというアイテムがなんか素敵。

「うさぎ屋のひみつ」
「春の窓」

「トランプの中の家」

 森で出会った料理番ウサギがトランプの中に消えるのを追いかけて、トランプの中の家に行く女の子。しかし、入ったはいいが元に戻る方法がわからないことに気づく。そこで、料理番うさぎに方法を尋ねることに。この家から出るには別のトランプが必要だということを知る。幸い、屋敷ではうさぎに主人たちがまじないのかかったトランプをつくっている最中だが…。

 うさぎに導かれるようにして別の世界へ、というのが不思議の国のアリスを思い出させます。(解説のところにも出てたけど)この本の表紙にもなっているイラストがかわいかった。妹のわがままでトランプが破れたときはどうなることかと思ったけど、料理番うさぎとお嬢様うさぎの今後はなんとかなりそうで何より。2匹のレストラン気になります。それにしても、うさぎのお嬢様はおおらかというかなんというか。頼りになる娘さんです。