文字を食べる

読書備忘録ブログです。

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安房直子『春の窓 安房直子ファンタジスタ』

装画:100%ORANGE

あなたを、知らぬ間に、身近な日常の空間から、はるかな空想の時間へと連れゆく、安房直子のメルヘン。「北風のわすれたハンカチ」「あるジャム屋の話」など、心がほぐれ、やすらぐ、12作品を収録。
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000209917


 いろんな話が収録されていますが、どれも優しい短編ばかりでした。なかにはちょっと後味が悪いものや、怖いものもありましたが。表題作の「春の窓」が特に好きです。こういう物語に出て来る猫ってなんでこんなに可愛いのか。「海からの電話」も可愛くて好きです。

 以下、概要だったり、感想だったり。自分用です。

黄色いスカーフ

 大きな絹のスカーフはとっても便利。おばあさんと黄色いスカーフの話。スカーフはものを喋る。そのとおりにするとおばあさんの身に不思議なことが。ほんとにスカーフって便利。

あるジャム屋の話

 男性が森の小屋でジャムづくりに励む。しかし、ジャムはいっこうに売れない。ある日、男が家に戻ると家で牝鹿がジャムを食べていた。話をすると鹿は男のジャムが売れないのはおかしいと色々案を考えてくれることに。鹿はひとまずジャムのレッテルを作る作業を始める。すると新しいレッテルの貼られたジャムはよく売れた。
 鹿が人間になって、男と結婚するくだりはこういう話ならではって感じがする。しかし、なんとも一途な鹿です。(そして、いじらしい)男もだけど。

北風のわすれたハンカチ

 寂しさを紛らわせたくて、音楽を習いたいと張り紙をつくった熊。そんな熊の家に北風の家族がそれぞれやってくる。北風のお父さんはトランペット、北風のお母さんはバイオリンを持っていたが、熊が素質なしなため、しっかり教える前にお礼だけもらって、さっさと帰ってしまった。最初よりも寂しくなった熊。そんな熊のもとに次は北風の女の子がやってくる。そして帰り際、女の子は青いハンカチを忘れていく。そのハンカチは不思議な力があって。
 くまが可哀想だったんですが、救われるオチでよかった。

日暮れの海の物語

 海のほとりの村にすむ縫い物上手の娘・さえは海がめから逃げるためにいとばあさんの家にやってきた。好きな男が病気になり、それを治す薬のもと、海がめの甲羅を手に入れるために、海がめと結婚する約束をしたが、それが嫌で逃げ出した。音沙汰のなかった海がめがある日、美しい反物を持って、いとばあさんの家にやってきた。さえのための着物。いとばあさんは魔除けのおまじないを思い出し、さえと一緒にその美しい反物で色とりどり針さしを作る。海がめは来なくなったものの、さえは海がめを裏切ったことを気にし続け…。
 どっちがさえにとって不幸だったのかと考えました。ちょっと怖い。

だれにも見えないベランダ

 読んだことあるので要約・感想は割愛。

小さい金の針

 おばあさんは古いバスケットを針箱にしている。ある日、その中の針さしになぜか1本小さな金の針が混ざっていた。とある夜、おばあさんが針仕事をしようとしたとき、バスケットが青く光っているのを見つける。ふたを開けてみると、小さな白いねずみが針仕事に励んでいた。ねずみは針さしがないので貸してもらっているという。ねずみは引越しのために靴を縫っているという。そして、それが完成するとねずみはお礼に金の針をおばあさんに置いていく。だが、おばあさんが金の針で自分の部屋のカーテンを作り終わったとき、不思議な出来事が起こる。
 最後の、やっぱり針返して(要約)のくだりにちょっと笑った。

星のおはじき

 同じクラスのあやちゃんのおはじきを3つ盗んでしまった。返したいけど返せない。家の前の柳の木に気持ちを話すと、柳が笑って「あずかってあげる」という。(<わたし>の家庭環境は複雑で、おばあちゃんと2人暮らし。おばあちゃんは「柳に風」という言葉が好き)。女の子は柳の言う通りに根元におはじきを埋めた。時は過ぎて、おはじきを埋めた場所から花咲いた。
 これでいいのか?と思わないでもないが、逃げ道が用意されてるのは心のためにそれはそれで…。

海からの電話

 海へギターを持っていった音楽学校の学生の松原さん。ちょっと転寝をした間にギターの弦が全部切れてしまった。怒った松原さんに謝る声。犯人は小さな赤い蟹だった。蟹は必ず直して見せる、直したら電話で知らせるという。松原さんは試しに預けてみることにした。そして、一週間後カニから荷物が届く。中身は白い巻貝だった。耳に当てるとギターの音と波の音が聞こえてきた。
 蟹たちのお茶会の描写が可愛らしい。貝殻の食器とか。海のにおいが広がり、ふしぎな甘さとさわやかさを持つお菓子、気になる。かわいい話でした。

天窓のある家

 友人が持つ天窓のある別荘でしばし静養することになった<ぼく>。ある日の晩、天窓を眺めてそこに出来た花の影に触れてみると、そこほのかに銀色になった。つまむこともできた。思わず幼い頃のように母への報告をしてしまう。亡くしたばかりだったのに。いつの間にか眠ってしまったが、起きたときも摘んだ花びらは手元にあった。そして、それからまた不思議なことが起こる。「かえして」という声が聞こえる。それは花の影の持ち主である、こぶしの花の声だった。
 天窓から見える風景。周りの緑の描写が綺麗。花の影のおかげで<ぼく>は元気になったけど、こぶしの花が犠牲に。なんか悲しいというかキツイ話でした。

海からの贈りもの

 病気のおかあさんから五十円玉を2つもらって海の町のお祭りにやってきたかな子。50円で買えるものは少ないが、たまたま見つけたお店できれいな桜貝を売っているのを見つけ、購入することに。しばらく歩いていると桜貝から声が。言われるままに進むと何人かのおばあさんと遭遇。桜貝を使ったおはじきをすることに。
 海ばあさんの話を聞いたときは殺生な、なんて思ったりもしましたが、桜貝の贈り物はかな子にとってはすごく嬉しかったんだろうな。

春の窓

 貧乏な売れない絵描きさん。家の中は外より寒い。そんな絵描きのもとに猫がやってきた。手っ取り早くあたたかくなるには猫を飼うことだ。そのアドバイスに従って絵描きはその猫を飼うことにした。確かにあたたかくはなったが、まだ寒い。猫は魔法を使おうと提案。絵描きに窓の絵を描くように言う。絵描きはまず窓枠を描き…。出来た窓から見える景色は本物。電車も動く。ある日、電車に絵描きが描いた覚えのない少女の姿があった。思わず身を乗り出す絵描きだが、窓の向こうは別の世界なので行けば消えてしまうと猫に止められる。しかし、絵描きは少女のことが気になって仕方がない。
 猫の仕草がかわいい。(特に絵が完成したときのでんぐりがえし3回転)しっかりしているところもいい。窓枠から見える景色の描写もきれい。不思議で温かな話でした。

ゆきひらの話

 何十年ぶりかにゆきひら鍋を見た熱のあるおばあさん、ゆきひらに勧められ、りんごの甘煮を作ることに。冷たい甘煮を作るのに、ゆきひらはりんごだけおばあさんに切ってもらい、あとは自分で。火をつけ、とろ火にし、火を消し、外に出て雪を降らして鍋を冷やす。
 ゆきひらさん、優しすぎ。ちょっとうるっとしました。