北山猛邦著『名探偵 音野順の事件簿』シリーズ2作分の読書記録のまとめ。
装画:片山若子
『名探偵 音野順の事件簿』シリーズ
『踊るジョーカー』
類稀な推理力を持つ友人の音野順のため、推理作家の白瀬白夜は仕事場の一角に探偵事務所を開設する。しかし当の音野は放っておくと暗いところへ暗いところへと逃げ込んでしまう、世界一気弱な名探偵だった。依頼人から持ち込まれた事件を解決するため、音野は白瀬に無理矢理引っ張り出され、おそるおそる事件現場に向かう。新世代ミステリの旗手が贈るユーモア・ミステリ第一弾。
(引用元 http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488419110)
気弱な名探偵が謎を解く短編集。5つの事件の話が収録されています。
初めて読む作家さんですが、とてもおもしろかったです。メイン2人のキャラが良い。特に探偵役の音野は他ではあまり見ないような感じの探偵でなんだか新鮮でした。寝癖、人見知り、気弱…そんなんで大丈夫かって感じですけど、これが推理のときはなかなか頼もしくて。あんまり自信はなさげだったけど。ワトスンポジの白瀬も良いキャラ。音野のためにいろいろ手配するんですけど、ちょっとずれてるというか。この人の探偵に対するイメージがすごすぎる。笑ってしまいます。
小さな探偵事務所にお客さん用の椅子が用意されるのはいつになるんでしょう。デスクに絨毯、ライトはなかなかなもののようですけど。ライトの光を見て「まぶしっ!」と思わず発してしまう依頼人にも笑った。
推理はなかなか本格的。凝ったトリックのものばかりでおもしろかった。「毒入りバレンタインチョコ」は最初よくわからなかったんですけど、図があってよかった。「ゆきだるまが殺しにやってくる」のトリックもなんかすごいなと思いました。オチには笑ったけど。被害者、それ殺され損じゃ…、みたいな。キャラたちのやりとりなど、コミカルな部分も多く楽しめると思います。続編も読む予定です。音野と白瀬の活躍、もっと見たいです。
収録
踊るジョーカー
時間泥棒
見えないダイイング・メッセージ
毒入りバレンタイン・チョコ
ゆきだるまが殺しにやってくる
★単行本
★「毒入りバレンタインチョコ」というタイトル見て、『毒入りチョコレート事件』を思い出した。
『密室から黒猫を取り出す方法』
完成間際の密室に黒猫が入り込んだ! 思わぬ闖入者に慌てふためく犯人を描いた表題作をはじめ、世界一弱気な名探偵・音野順(とその助手)の活躍を描いた短編5編を収録。
(引用元 http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488419127)
踊るジョーカーの続編です。やっぱり面白い。本格ミステリなんだけど、ところどころで笑ってしまう。キャラのやりとりとか。前作と繋がるキャラやアイテムが所々で出てきて、にやにやしたり。そう思うと、前作見てからの方が楽しいかもしれないです。短編を5編収録。
■密室から黒猫を取り出す方法
黒猫でミステリというとポーの「黒猫」を思い出します。トリック同じとかそんなことは全然ありませんでしたが。女の子の黒猫に足元すくわれた犯人。
■人喰いテレビ
人を食べてしまうテレビに舞台の場所も相まって、なんだか最初は不気味に感じたんですが(怪しい集団もいましたし/笑)、犯人の顛末には笑ってしまいました。文中にデジタルテレビが主要になるので「砂嵐が珍しくなる」とあって、確かにそうだなあと思った。そういえば、私も砂嵐最近見てないや。
■音楽は凶器じゃない
前作に縁のあるキャラが登場したりしておいしい話。が、後味悪いというか、すっきりしない。犯人はわかったようなもんなのに、何もできないというのは歯がゆいですね。続編出るなら、この犯人また出るんでしょうか。
■停電から夜明けまで
音野の兄さんが登場する話。そして、弟よりも活躍してます。やっぱりこの人も観察眼があるというか、探偵としてやっていけるんじゃなかろうか。まあ、最後に犯人を示したのは後述する台詞のとおり、音野さんなんですけど。「ね、一言も喋らずに、ただ黙っているだけで、犯人を示してしまったでしょう?」この言葉は印象的。犯人が使うアイテムの中に「からまないくん」があって、にやっとしてしまいました。からまないくんは素晴らしいらしいです。この話、ドキドキすると同時に面白かったです。
■クローズド・キャンドル
音野とはまるで正反対の探偵・琴宮の登場。彼の付き人だと思っていた人物がまさかの人物でちょっとびっくりしました。自然すぎだろ!(笑)この話も薄気味悪いところがあるのに。色々笑っちゃいました。ゴロゴロ人形は売りたくないと嘆く白瀬とか。
人見知りの音野が普通に話してしまう女性が登場しますが、これはなんかのフラグなんですかね。
※2011年の感想です。
収録
密室から黒猫を取り出す方法
人喰いテレビ
音楽は凶器じゃない
停電から夜明けまで
クローズド・キャンドル
★このシリーズのコミックver(4巻まで出版されている)