宇江佐真理著、『ひょうたん』と続編の『夜鳴きめし屋』の読書記録。
目次つけるまでもない感じですけど、一応つけました。
鳳来堂シリーズ
『ひょうたん』
本所五間堀にある古道具屋・鳳来堂。借金をこさえ店を潰しそうになった音松と、将来を誓った手代に捨てられたお鈴の二人が、縁あって所帯をもち、立て直した古道具屋だった。ある日、橋から身を投げようとした男を音松が拾ってきた。親方に楯突いて、男は店を飛び出してきたようなのだが……(表題作)。江戸に息づく人情を巧みな筆致で描く、時代連作集!
(引用元 https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334745547)
6編の話が収録されています。時代小説は普段あんまり読まないのですが、面白かったです。すごく好みの話でした。温かくて、切ない。
二人が営んでいる道具屋「鳳来堂」にお客さんが道具を買い取ってもらいにやってくる。大体そうして話が始まり、その持込物を巡って話が進んでいくのですが…。円満解決の話もあれば、微妙な後味の話もある。全部がハッピーエンドというわけではないけど、その中にある音松やお鈴の気持ちの描写がまたぐっとくるといいますか。「びいどろ玉簪」と「貧乏徳利」は切なかった。夜、道具屋に集まる仲間たちの数が少なくなったのだと思うと寂しい。でも、その後も相変わらず集まり、お鈴の料理を食べて、わいわい騒いでいるということがわかる文章がちょろっとあって、少しほっとした。どの話にも音松の友人達が鳳来堂に集まってご飯を食べて話をする、という場面があったように思うので。
と、ご飯を食べるシーンが割とこの話には多いんですが、出てくる料理もおいしそうでした。ほんとに良いにおいが漂ってきそうな、そんな感じです。お腹が空きます。特にお鈴が息子の長五郎に出した味噌おにぎりがおいしそうでした。それが出てくる場面も良かったと思う。母が子を想う場面というか。
登場人物たちが生き生きとしていて良かった。音松とお鈴の性格のバランスもいいなあと思う。良い夫婦です。
収録
織部の茶碗
ひょうたん
そぼろ助広
びいどろ玉簪
招き猫
貧乏徳利
★単行本の表紙も素敵なんです!
『夜鳴きめし屋』
本所五間堀の「鳳来堂」は、父親が営んでいた古道具屋を、息子の長五郎が居酒見世として再開した“夜鳴きめし屋”。朝方までやっているから料理茶屋や酒屋の二代目や、武士、芸者など様々な人々が集まってくる。その中に、かつて長五郎と恋仲だった芸者のみさ吉もいた。(後略)
(引用元 https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334768096)
読み終わってから知ったんですが、『ひょうたん』の続編だそうで。聞き覚えのある店、名前だと思ったわけです。もっと早く気付くべきでした。
市井の人々の生活が淡々と描写されています。こういう日常を書いた話って好きだなあ。話のメインは親子でしょうか。男女間のいざこざはちょっと面倒というか、うっとうしくも感じられたけど(振り回されてる子供がちょっと不憫に思えて)、親子が落ち着くべきとこに落ち着いて良かったと思う。浦田様も。
特別凝った料理ではないんですが、鳳来堂の料理はとてもおいしそうだった。お腹がすきます。
収録
夜鳴きめし屋
五間堀の雨
深川贔屓
鰯三昧
秋の花
鐘が鳴る
★単行本の表紙は「鳳来堂」のメニュー。