乙一作品の読書記録をまとめました。
目次長くなってしまった…。
乙一作品
『暗いところで待ち合わせ』
初めての乙一作品。視力をなくした女性が1人で暮らす家に、殺人事件の犯人として追われる男性が逃げ込み…という話。男性、女性と交互に2人の視点で話が進むミステリー小説。
装丁がちょっと不気味な雰囲気なので、最初はもっと怖い話かと思った。奇妙な同棲生活。考えてた展開と違って、いい意味で裏切られた。ドキドキしながら読み進めました。おもしろかった! 2人の境界線・心理描写など解りやすかった。文章も読みやすかったです。
★映画
『天帝妖狐』
短編と中編。
A MASKED BALL
ラクガキがネットワークになっている斬新な話。わくわくどきどきしながら読みました。犯人が意外な人で一本取られた! V3の正体がわかったときも驚きました。まさかあの人だったなんて! こういう話すごく好きです。
天帝妖狐
こっくりさんから始まる話。主人公とヒロインの微妙な距離感が好き。泣けました。血表現が多いので苦手な人は注意が必要かも。こちらの話も切なくて好きです。上の話の雰囲気と比べると、かなりギャップがありますね。
JUMP jBOOKSと文庫では話の内容がだいぶ変わるようです。まじか!
★JUMP jBOOKS版
『平面いぬ。』
「石ノ目」「はじめ」「BLUE」「平面いぬ。」の4つの短編が収録。その中の1つ「はじめ」は週間少年ジャンプで「ヒカルの碁」の漫画を担当していた小畑先生が読みきり漫画にしていたと記憶しています。
4つのどの短編にも別れという要素が含まれている気がする。特に「BLUE」は少し残酷な感じもしましたがラストは切なさも感じました。それに比べると最後に収録されている「平面いぬ。」のラストは茶目っ気みたいなものもあって、ほのぼのとしていて、読後の後味はよかったです。
『ZOO』
短編集。ホラー・ミステリーが主で、その中には切なさも含まれます。ちょっとどころか、かなりグロい話も混じっているので、血表現が苦手な人は注意した方がよさそうです。(※単行本の感想です)
カザリとヨーコ
双子で顔立ちは似ているにも関わらず待遇の違う2人。ヨーコの母親やカザリからの扱いが酷い。ラストのどんでん返しには驚きました。だけど、乙一らしいとも思う。アソと幸せに過ごせるといいけれど。
血液を探せ!
どうにも読んでいる最中むず痒くなりました。コミカルタッチで、事態は深刻なのに思わず笑ってしまう。登場人物の名前がいい。
陽だまりの詩
「死」というものの価値観について考えてしまう。主人公の女の子の考え方の変わっていく経過がいい。世界にひとりぼっちになってしまったら、どんなに寂しいんだろう。切ない話です。
SO‐far そ・ふぁー
家族の団欒。ソファに座ることで家族を繋ぎとめていた「ぼく」の気持ちを考えると少し切ない。この話にも何度か驚かされました。同時に思い込みってすごいと思う。
冷たい森の白い家
いまいちよくわからなかった話です。死体を積み上げることによって作った家って、想像すると物凄く気味悪い。「わたし」は少女に会ってなんらかの感情を持ったはずなのに、結末が……。また同じ事の繰り返しでしょうか?
Closet
犯人のわかっているミステリー。どうやってリュウジは手紙を郵便受けに入れたんだろう。結局のところ生きてたってことなんですよね? ミキの今後が危ぶまれます。
神の言葉
ほんとにあったとしたら非常に怖い。自分の言った事がほんとになったとしたら嬉しいかもしれないけれど、それが取り消す事ができないとなると……。他人によく見られたいというのはわかるけれど、それで誰かをどうこうしようっていうのは愚かかなあ、と。
ZOO
訳のわからない話、って思うは私の読解能力が足りなかったからかも。
自分で殺害したのに、その殺人犯を捕まえてみせるという演技。現実逃避ってあるけど、その演技をする意味が理解できない。さっさと罪をあかした方が楽になると思うのに。ガソリンスタンドの人はこの遊戯に毎回つきあってたんだなあと思うとなんだかしみじみしてしまいます。
SEVEN ROOMS
この短編集の中で一番グロテスクな気がします。そして何より切ない。閉じ込められた人達の中での不思議な連帯。次は自分が殺されてしまうのだという恐怖。「ぼく」が溝を通ることがどれだけその閉じ込められている人たちの救いになったんだろう。「ぼく」にネックレスと手帳を預けた人たちの気持ちを考えるとどうにも悲しいです。
途中で時々描写される姉弟愛も切ない。結局犯人はどうなったんでしょうか。女の人ばかり狙ってたみたいだけれど。やりきれなくて、悲しい結末。
落ちる飛行機の中で
ハイジャックに巻き込まれた人たちの話。切羽詰ってるはずの状態なのにコミカルタッチのせいか笑ってしまう。漬物とか空き缶マジックとか。漬物で300万稼げるだったらそれでいいと思うのに。
ハイジャックの犯人の最期や「わたし」の行動には驚かされました。まあ、だけど死ななくてよかったと思う。セールスマンがいい味を出してました。
「SEVEN ROOMS」が個人的に好き。
★映画
SO-farの神木くんとSEVEN ROOMSの須賀くんの演技が特に良かった。
役者さんたちの演技は良いけど、原作ファンは所々の改変にもやっとしちゃうかも。
『失はれる物語』
装丁がすごく好き。読んだことのない「マリアの指」のみの感想です。(※単行本の感想です)
マリアの指
ミステリー。乙一のミステリー小説の主人公って、普段は他の人と変わらないのに行動力あるよな、といつも思う。この話は簡潔に言うと自殺なのか他殺なのか、という話。ちょっと想像できない感じの話でもある。マリアという人はほとんど記憶の中でしか生きている。だから彼女の指だけの存在はとても不思議。それなのに存在感は強い。指だけなのに。というか痛いです。身体がピリピリと。
犯人はかなり意外な人。全然思いもしてなかった人でした。だけど、読後はすっきり。主人公の成長があったからだろうか。
★こっちの装画も素敵です。(デザイン:帆足 英里子(ライトパブリシティ))
『箱庭図書館』
内容にもありますが、『箱庭図書館』に収録されている話は、どれも読者投稿作品から著者が「リメイク対象」として選んだものをリメイクしたものなのだそうです。知らずに読んでいたので(なんかいつもと違うような…と漠然と思ったりした)、ちょっとびっくりというか、なんだかなあとなんとなくしっくり来ないものがあります。が、まあ楽しかったのでいいか! 読者投稿作品の方もまた読んでみたいです。
どの短編も良かったと思うけど、最後の「ホワイト・ステップ」は作者自身があとがきで語るように、作者らしい話の雰囲気、展開で好みでした。雪に書く文字で平行世界の誰かと会話とか、良いなあと思う。現実世界のファンタジーというか。雪の靴跡でしか知らなかった相手と対面した場面は、なんだか少し切なかったです。
あとは、「コンビニ日和!」も上の話とはまた傾向が違うけど、好きな話でした。テンポが良くて、楽しかったです。後味も悪くないし。文善寺町という箱庭の中で、これらの傾向の違う話が繰り広げられてたのだなあと思うと、なんか不思議というか。一つ一つの短編の中で、何気に登場人物や時間軸に繋がりがあったりして、そんな些細な仕掛けが楽しかったり。潮音さんとか。彼女、こんな最後まで出てくるとは思わなかったです。
収録
「小説の作り方」 / 黄兎さん「蝶と街灯」
「コンビニ日和!」 / 泰さん「コンビニ日和!」
「青春絶縁体」 / イナミツさん「青春絶縁体」
「ワンダーランド」 / 岡谷さん「鍵」
「王国の旗」 / 怜人さん「王国の旗」
「ホワイト・ステップ」 / たなつさん「積雪メッセージ」
★文庫本の装丁も好きです。