文字を食べる

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皆川博子『倒立する塔の殺人』

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図書室にひっそりと置かれた美しいノート。そこに少女たちは「物語」を書き継いでいたが……。万華鏡のように美しい幻想的なミステリー。
(引用元 https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-67753-8

 ※読んだのは理論社のミステリーYA!でした。

 理論社が出版しているミステリーYA!シリーズの1冊。タイトルと表紙の不思議な雰囲気に惹かれて手にとりました。
 ストーリーの大半は、小説の回し書きのために用意されたノートに記される手記と物語で構成されていて、1冊のノートが何人もの登場人物の手に渡り、物語が書き進められ、完成することで<倒立する塔の殺人>の謎が解ける。こんなスタイルのミステリを読むのは初めてで新鮮でした。

 物語の舞台が感じさせるのか、はたまた作者のどこか耽美な文章がそう感じさせるのか、戦時中という苦境にいる時代設定であるのに、なんとも幻想的に感じられました。また、それぞれのピースが繋がり、1本の線になった時には、その文章の緻密さにも驚きました。
 好き! もう設定も話も何もかも全部好きです。ほんとに面白かったです! 暗さも吹っ飛ばしてしまうような明るいラストはべー様のおかげですかね。登場人物の女生徒たちは皆どこか不安定な感じがあったのですが、べー様は安定しているというか、危ういぐらついた感じがなかったので。
 読後感も良かったです。文学のこと、絵画のことなど自分にはまだない知識も増え、興味の幅も広がったし、読んでみて良かったなあと思う。


★理論社のミステリーYA!(装画:佳嶋)