文字を食べる

読書の備忘録ブログです。

瀧羽麻子『うさぎパン』

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 第2回ダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞
 高校生が主人公。

内容

 高校生なった優子は同級生の富田くんと大好きなパン屋めぐりを始める。青春小説。

 優しい気持ちで読める本。話の中に流れる空気も穏やかで、途中寂しい展開もあったけれど読後は心が温かくなりました。そして、無性にパンが食べたくなる!
 気取ってない文章は読みやすく、下手な文章よりもすとんと心の中に落ちてきたような気がします。優子ちゃんと富田くんのやり取りは微笑ましくて、可愛く、家庭教師で年上の友人である美和ちゃんと村上さんカップルも落ち着いた雰囲気が素敵でした。

 しかし、なんてことのない女子高生の日常を描いた話だと思ったら、思いもよらぬところからファンタジー要素が。結局、どうしてそんな不思議が起こったのかはよくわからなかったけど、唐突ではあるもののきっかけはあったわけだし、さほど不自然というわけでもないのがなんかすごいと思う。
 タイトルが「うさぎパン」なんですが、作中にうさぎパンが登場する場面はやっぱり印象深かったです。優子がなぜうさぎパンが思い出に残っているのか、それがわかるエピソードにはほろりとするものがあります。うさぎのぬいぐるみとか。
 優子ちゃんと美和ちゃんは他人のはずなのに、なんだか姉妹のように見えます。美和ちゃんが見た夢は、聡子の存在があったからかな。
 読んだことのない作者の本でしたが、好きだなあと思ったのでいつかまた別の本も読んでみたいです。

収録話

 うさぎパン
 はちみつ(書き下ろし短編)


★単行本