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高里椎奈「フェンネル大陸」シリーズ

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 高里椎奈著「フェンネル大陸」シリーズの「偽王伝編」の読書記録まとめ。途中までです。

フェンネル大陸偽王伝

『孤狼と月』

13歳の少女フェンベルク(通称フェン)は王女にして悪鬼(グール)達の師団をまとめあげる将軍。祖国・ストライフを敵国の侵略から守り、国民の幸せを願い、そして愛する兄を支えるため、彼女は自らを鼓舞するのであった。そんな折、運命を変える出来事が!?
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000205309


 一気に読んだ。おもしろかった!
 この本を選んだのは表紙・挿絵を描かれているミギーさんのファンだからですが(ノベルス版/ほんと可愛いイラストです! 特にラストのフェンの晴れやかな笑顔が!)、ストーリーもなかなか奥深く面白かったです。王国の王女さま的位置にある主人公が謀反やらなんやらの罪で国を追放される…という展開の王道ファンタジー。シリーズタイトルの「偽王伝」にまだ触れられてないので今後が気になります。

 主人公はフェンベルクという名前の女の子。話の途中で明らかになった年齢は13歳。過酷な運命をたどるにはまだ幼い歳です。健気な子。彼女にはたくさんの世界を見て、どんなことにも負けないで強くあってほしい。
 一度どん底に突き落とされたフェンだったけれど、また這い上がることはできました。それもこれも出会った人たちのおかげだったんだろうなと思います。良くも悪くも人との出会いであんなにも変わるんだなあ。(テオとかサチとかクレインとか)フェンとサチのやり取りが好きです。あと、結局ユイジーンの本名は覚えることができませんでした。長すぎますよ、あの名前は。


★ノベルス版


『騎士の系譜』

王女にして将軍だったフェン。しかし彼女の人生は大きく変わっていった。辿りついたのはソルド王国の荒くれ者が集う店。そこで出会った騎士団見習いの少年ロカとフェンは、ふとしたことで重大な計画を知ってしまう。命を狙われる2人は?そして王国にまつわる秘密とはいったい何!?
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000205345


 今回も一気に読んだ。1作目からの続きものなので、フェン他馴染みのあるキャラもでてきます。テオは前作からの手前一緒に旅してるんだろうなと思ってましたが、まさかサチが登場するとは思いませんでした。彼は何者だろう。ますます謎は深まっていきます。何気に強いですし。

 活躍していたのは主人公のフェンよりも、タイトルにあるように「騎士」。

汝は何ぞ。我は護る者。王とは何ぞ。民を護る者。民とは何ぞ。王を支える者。王を護るは何ぞ。我ら、騎士なり。王に忠誠を誓う者なり。
(本文より引用)

 剣と魔法の世界のファンタジーには騎士はつきものだと思うけれど、やっぱりかっこいいです。フェンが出会った騎士見習いのロカも騎士団長であるシルフィードも誇りというか、自分の信じるものを持っていて、それを護るために走り戦う姿は本当に格好良いと思いました。たとえば剣が曲がって使い物にならなくなっても捨てずに戦う姿だとか、とにかく色々。ロカが護るって事がどういう事なのかわかったとフェンにいうシーンも好きです。というか、ザジャ兄弟が好きです。

 今回やっとシリーズタイトルである「フェンネル大陸 偽王伝」に入りこんだ感じ。後書にもあったけれど、前作が序章でこの物語が第1章。ソルド王国の王様がとある国の手の者に攫われた。これがきっかけ。なんで他国の王様を攫っていたのかは謎ですが、それ以上に攫われたという王様も気になります。歳をとってるはずなのに若いってどうしてだろう。
 そんなわけで、フェンやテオ、それにアシュレイ(ソルド王国で出会った伝説の戦闘集団「イリス」に属する男の子。性格はやや捻くれていると思われますが、根っこの部分は優しいというかお人好しのような気がします)が王様を探しに一緒に旅に出ることになりました。旅の仲間が増えるっていいなあ。なんか賑やかになりそう。…と思ったけど、そうでもないかも。
 ロカを見つけたフェンが何者かに襲われるシーンがあるのですが、その場面でどのように助けられたのか、どんなことがあったのか、という部分が本編で詳しく書かれていないのが残念でした。ちょっと気になるんです。


★ノベルス版


『虚空の王者』

ソルド8世王が誘拐された。王を追っている元王女で戦士でもあるフェンは新たな国パラクレスで襲われる。信頼するテオは倒され、フェンは監禁されてしまい、死を待つだけの状態に。彼女を襲った王に似ているクドラとはいったい何者なのか。王国を巡り、深まる謎と冒険の果てに……。
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000205426


 前作の「騎士の系譜」にて、攫われたソルド王国の王を捜す旅をしているところから話は始まります。主人公のフェンの旅の仲間はお馴染みのテオと前作で登場したアシュレイ。旅の仲間は増えましたが、賑やかになったわけではないようです。まあ、相手が相手だからなあ。でも、世界をまだまだ知らないフェンにとっては心強い味方ですよね。…相手がどう思ってるのかは別にして。なんだかんだ言って手助けしてくれるのだから、やっぱり味方でいいと思います。

 それにしてもサチって一体何者なんでしょう。パラクレスにも現れましたよ、彼。しかもフェンがピンチのときに。疑うわけじゃないけど、タイミング良すぎますよね。自分の危険も省みずに手助けしてくれたりするんだから、かなり良い人というかお人好しというか物好きというか。捜し人って誰だろう。

 今回は結構シリアス。ソルド王国の八世王の秘密・今までの政治がどのようなものであったか、真相はなんだか寂しかったです。
 フェンがソルド王国で出会った女の人・ベルテや双子のイトラとクドラの生い立ちもなんだか悲しかった。アシュレイが「人を2つに割る実験」とか言っていたけれど、本当だったとは。アシュレイ同様、冗談だと思ってました。元は1人なのに、2人にするなんて魔法みたい。魂はどうなってしまうのか。
 空を泳ぐ魚を見た事があるか。そうフェンに問うたクドラの姿は切なくて。傲慢で力があるのに良い方に使ってなくて、嫌なヤツ! なんて思ってましたが、自分の呪われた生い立ちに抗おうとしていたんだなと思うと憎みきれません。彼が死んだのかどうか、それは定かではないけれど、もしそうであったとしたらやっぱり寂しいです。何事もなかったかのように、イトラによってパラクレスは治められていくというのか。なんかしっくりしません。
 たぶん本人も言っていたことだし、イトラはパラクレスの元首になるのでしょうが、そうしたらソルド王国の王はどうなってしまうんでしょう。フェンたちの今後が気になります。


★ノベルス版


『闇と光の双翼』

王の帰りを待ちわびているソルド国民に伝えなくてはならない辛い事実とともに帰国したフェン。しかしさらなる悲劇がソルド王国を覆っていた。大国・シスタスが宣戦布告もなしに攻め入ってきていたのだ。王都陥落。親愛なるロカはどうしているのか。そして……ついにフェンは戦場に。
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000205587


 パラクレスからソルドへと帰還したフェンたちですが、フェンたちが出て行った間にシスタスという国に攻められていて。そんなこんなで今回の話は進みます。ザジャ兄弟に会うのが物凄く久しぶりな気がします。シルフィード、好きなんですよね。女遊びには全然慣れてなくて、お堅い融通のきかない騎士。でも、厳しくとも優しくもあるというベタな設定ではあるんですけどね。やっぱり好きなんですよね、こういうキャラ。
 サチみたいな掴み所のないキャラも好きですが。彼のふざけたように見せている言い回しが好きです。「旅の途中の無礼者です」という台詞とか。しかし、彼はほんと一体どういう人物なんでしょうか。シルフィードとも知り合いだったし。だけど、ソルドの人というわけでもないみたいだし。旅の仲間であるテオやアシュレイは相変わらずな感じでした。

 新キャラも何人か登場しました。今後のストーリー展開のキーになりそうな人たちです。ラビッジ王とか敵国シスタスの騎士とか。シスタスの兵士たちにとっては傍若無人(?)なノエルよりも口調は割と穏やかな感じのエリウッドの方が良い、というような描写があったけれど、エリウッドは底が知れませんね。だからこそ、恐ろしくもあるんですが。

 アシュレイ、今後どうなるんだろう。二人の対峙に、エリウッドからの誘いでそういうことになりそう、という予感はしてたんですが。アシュレイはどんな考えを持ってたんだろう。その辺の彼の心境もこれから語られていくんでしょうね。気になります。あと、気になるといえば、フェンの命を狙い、またフェンの命を救ったヘリオトの花の香りを持つ人物も気になります。
 ロカの左腕は残念でしたが、とりあえず皆無事で良かったです。いまいち、この話の世界の国々の距離とか掴みづらいのですが、今後主軸になっていくのはソルド王国なんでしょうか。


★ノベルス版


『風牙天明』

我こそが唯一絶対の王であると宣言し、他国を圧倒的な力で侵略する宗教国家シスタス。この大国に対抗すべく小国連合を作らんと大陸を駆けるフェンたちだったが、小国連合を統率する王と見込んだ人物は、暗殺者に殺されてしまう。希望失われしその時、大国に弓引く者出現。その者、自らを「偽王」と名乗る!
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000205758


 読んだのにすぐに感想メモらなかったので記憶がすでにあやふやになっている。簡単に覚えていることだけ一応自分のためにメモっておく。

・シリーズタイトルである「偽王」の意味が漸くわかる。まさかあんな形でフェンが偽王を名乗るとは。でも、実際に王になるのはあの人ですよね?
・フェン、ロカ、リノ、3人の視点から描かれる物語。リノ編はやっぱり政治的な話が多め。リノの国と女の人2人が治めてる国(名前忘れちゃった;)との間にあった怨恨にびっくり。国同士の怨恨はそう簡単にはなくなりませんからね。難しいことです。
・ロカ編で出てきたイカレ帽子。結局どんな帽子被ってたんだろ。ロカたち、思いがけない戦争に巻き込まれてたけど、味方が増えたのは何より。ロカって強くなったんだなあと実感。
・やっぱりそっちに行っちゃったのかアシュレイ…。

 どうもアシュレイが幻想水滸伝シリーズのルックとかぶってしまう…。


★ノベルス版



『雲の花嫁』

世界を支配せんと目論む大国シスタス。これに叛逆する意思を固めたフェンは、自らを“偽王”と名乗り、たった三人でシスタスに潜入する。そして、そこで知ったのは、困窮するラビッジ王国を一から建て直した若き女王ローゼルの悲劇。さらに、現ラビッジ王リノが主導する小国連合に、再びシスタス軍が侵攻を開始。
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000205897


 今回はラビッジの過去にあった話が主ですね。そして、前々からちょこちょこ出てきたヘリオトの香りの主が判明した回でもありました。フェンを助けてたっていうよりは己の目的を為す度にそこに偶々フェンがいたってだけなんですね。アレフの行動が何からきているのか、それを知るとなんだか物悲しい気持ちになります。
 そんな感じで周りの活躍が目立ってましたが、それでも、やっぱりフェンの活躍なんかも見逃せないわけで。人が苦しんでるのはほっとけないけど、よそ者には関係ないと言われれば何も言えなくなってしまう。その辺りのフェンの葛藤と、自分の答えを導き出した辺りがなんか良かったです。

 そういえば、最後の辺りでイリスの族長が出てきましたが、イリスというとアシュレイのことが思い出されます。割とこのシリーズにも出てたと思いますし。あと、サチは一体何の目的で動いてるんですかね。


★ノベルス版