文字を食べる

読書の備忘録ブログです。

出久根育『チェコの十二ヵ月 おとぎの国に暮らす』

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2002年にプラハに移り住んだ絵本作家がチェコでの日々を綴るエッセイ集。歴史の魅力が生活の中に息づくチェコで、復活祭、謝肉祭、クリスマスから、キリスト教以前の素朴で古い風習まで、季節を彩るフォークロアを中心に活写します。
https://www.rironsha.com/book/czech


 理論社HPで連載の「プラハお散歩便り」の書籍化。サイトの副題は「お散歩おばさん」という意味で、チェコ人には多い苗字らしい。本編にもあったけど、チェコ人の名字はおもしろいものが多いな。

 著者のチェコ・プラハでの生活を綴ったエッセイ。文章表現が美しく、エッセイなのに上質な児童文学を読んでいる気分になった。すごくよかった! チェコは自分にとっては未知の場所だから、余計にファンタジーというかフィクションっぽく感じるのかもしれない。特に「銀河鉄道のネトリツェ」に出てくる劇団の話とか。
 それにしてもチェコの四季も美しい。クリスマスも私の知っているものとはずいぶん違うみたい。おいしくないのに鯉のフライを食べるとか。なぜ、って思うけど昔から食べてるから、とか色々あるのかな。ちなみにチェコではプレゼントをくれるのはサンタクロースではなく、「イェジーシェック」(生まれたばかりのイエス・キリスト)で、はいはいでやってくるからクリスマスツリーの下にプレゼントがあるんだとか。すげーな。
 「チェルベナー・ジェパの魔法」に出てくるチェコ風のボルシチを作る描写がすごく好き。
 その一部を以下に引用

まずは、下準備から。チェルベナー・ジェパは千切りにします。土っぽい色の株をざくりとふたつに切った瞬間に、泥んこの農家の娘が、深紅のドレスをまとった美しい女性に変身します。

 本当にすてきなので未読の方はぜひ読んでみてほしいです。