文字を食べる

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益田ミリ『かわいい見聞録』

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集英社文庫

日々、私たちが何気なく口にしている「かわいい」という言葉。大人になった今だからこそ、この言葉の前でもう一度立ち止まって考えてみたい。何をかわいいと思うのか、そのかわいさの源泉はどこにあるのか……。
https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-771194-3


 日本でよく使われている「かわいい」という表現。そんな「かわいい」を改めて考えてみることにした著者のエッセイ。独特な視点で楽しい。シャーペンの芯をかわいいと思ったことはなかったけど、著者の話を読んでいたら「なんかかわいいかも」と思った。
 気になったことは本やネット等できちんと調べている著者。ちょこちょこ参考文献からの引用もあり、勉強になった。
 あやとりの項目では、世界各地であやとりが行われていることを知って驚いた。表現しているものも色々あるようで。ナウルには「大型カヌー」というあやとり、北アメリカのナバホでは「たくさんの星」となにかを後世に伝えるための道具として使われているらしい。おもしろい。
 雪だるまの項目には笑った。海外の鼻がにんじんの雪だるまより、日本の素朴な雪だるまの方が確かにかわいい。

「うちにニンジンあるから取ってくる!」
 というのは、ちょっと違うんじゃないか。
 あるもんでがんばろうや。 
「雪だるまのかわいい下手さ加減」p77より

 また、昔はかなり本格的な達磨を雪で作っていたらしい。そこにも笑ったし、驚いた。あと著者の雪だるまエピソードにほっこり。雪だるまの仲間を作った人の気持ちを考えるとそこにもほっこり。

 本のスピンの話もよかった。平凡社 大百科事典』ロマンチックだなあ。「しおり」以外の項目に書かれている内容が気になってくる。

 さくっと読めて楽しいエッセイだった。ものの見方が変わったような気がする。いろんなものを「かわいい」と思えるようになったら、世の中もっと楽しいのかもしれない。