東京美術から出版されている美術の入門書シリーズ、「かわいいシリーズ」の読了記録。
どれも表紙からすでにかわいいです。
東京美術・かわいいシリーズ
三戸信惠『かわいい琳派』
人気の高い琳派の名品から、「かわいい」作品のみをセレクトしました。日本美術ってこんなに楽しい、と目からウロコの1冊です。
https://www.tokyo-bijutsu.co.jp/np/isbn/9784808709907/
琳派作品の中から特にかわいいものを選りすぐった本。俵屋宗達から始まり、尾形光琳、酒井抱一と名だたる画家たちの作品が見られます。中村芳中という画家の作品が自分は特に好きだと思った。
「丸く曲線的な表現」「均整を欠く」「デフォルメと単純化」「パターン活用」「金銀(キラキラ)と着色(カラフル)を多用」「野に咲く草花」これらに対して私たちは<可愛らしさ>を見出すというが、確かに…と思う。これらの要素を琳派作品は多く含んでいるそうだ。なるほどなあ。確かにどれも可愛らしい。もっといろいろ知りたくなるなあ。
湯本豪一『かわいい妖怪画』
多くの人に愛される妖怪はどのようにして生まれ、親しまれるようになったのか?妖怪たちの「かわいい」にスポットをあて、時代を遡ってそのルーツと広がりについて紹介する。
https://www.tokyo-bijutsu.co.jp/np/isbn/9784808710057/
かわいい妖怪画は『ときめく妖怪図鑑』(山と渓谷社)でも見たけど、本著にもかわいい妖怪がたくさん紹介されている。素朴なタッチの絵が好きだなあ。妖怪って平安時代くらいはひどく恐ろしいものって感じだったはずが、江戸の頃にはなんだか愉快な存在に変わっていってるんだな。日本人の未知のものに対する意識の変化なのかなあ。
「百鬼夜行絵巻」「付喪神絵巻」(最終的に付喪神たちは修行し、成仏するらしい。知らなかった)「化物嫁入絵巻」「稲生物怪録」「大石兵六物語絵巻」などいろいろ紹介。「神農化物退治絵巻」という桃太郎のパロディで放屁で化物を退治するという変わり種(?)な絵巻も。そんなのあるんだ…笑 ちょっと卑猥な「春画妖怪絵巻」なんてものもあって、日本人は妖怪が好きなんだなあと思った。
感想がある記事はこちら
mogumogu101.hatenablog.com
矢島新『かわいい禅画』
室町時代の禅宗絵画を庶民に親しみやすい「禅画」に発展させた江戸時代の禅僧、白隠と仙厓。二人が描いた“かわいい”禅画を紹介!かわいいユニークな絵を味わいながら、彼らが伝えたかった禅の心を読み解きます。
https://www.tokyo-bijutsu.co.jp/np/isbn/9784808710620/
禅画と聞くとなんとなく小難しいものをイメージするが、そんな禅画をゆるく親しみやすく描いた白隠と仙厓の「かわいい」禅画を読み解く本。白隠、仙厓の経歴や人となりもなんとなくわかっておもしろかった。弟子への接し方は逆な感じなのに、絵の雰囲気は似ていて、なんか不思議な感じ。
それにしても、どちらの絵もゆるくてかわいい。簡略化されたシンプルなラインがいいのかなー。
コラムで紹介されていた「かわいい」の反対は「きれい」という考えになんか納得した。
上野友愛、岡本麻美『かわいい絵巻』
かの有名な「鳥獣戯画」を筆頭に、「かわいい」絵巻をたっぷり紹介します。「とにかくかわいいものが好き」という方から日本美術ファンまで、肩の力を抜いて楽しめる一冊。日本美術がぐっと身近になります。
https://www.tokyo-bijutsu.co.jp/np/isbn/9784808710385/
「かわいい」に注目して絵巻を鑑賞する美術入門書。二人の学芸員さんが絵巻それぞれのかわいいポイントをわかりやすく教えてくれます。絵巻の扱い方についても。こうやって読むのかあ。
絵巻ってかわいいのか? って思ったけど、思った以上にかわいかった。超有名な『鳥獣人物戯画』の存在が頭からすっぽり抜けていた。擬人化かわいい。絵の雰囲気、描かれた人物の表情などなど色んなかわいいポイントがあるんだなあ。こうやって絵巻を見ると奥深く、おもしろいなあと思う。絵巻それぞれの物語をしっかり知りたいと思った。
個人的に「しぐれ絵巻」が印象に残った。二重まぶたのすごい流し目! 絵巻を描いたのは28歳の女性とのことで、当時もそういう男性が人気だったのかなあ。