文字を食べる

読書の備忘録ブログです。

東直子『とりつくしま』

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装画:岡田里

死んでしまったあなたに、とりつくしま係が問いかけます。そして妻は夫のマグカップに、弟子は先生の扇子に、なりました。切なくて、ほろ苦くて、じんわりする連作短篇集。(※単行本)
(引用元 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480804075/


 現世に未練を残して死んでしまったものに、とりつくしまを与えてくれる「とりつくしま係」。魂のあるものにとりつくことはできないが、魂がないものならば何にでもとりつかせてもらうことができる。
 なんとも奇抜な設定、不思議な話でした。すでに死んでいる、という前提なのでどの話もやはり切なかったです。初っ端の「ロージン」から胸にくるものが。「トリケラトプス」「日記」はどちらも死んでる側が伴侶を残してきてる設定でしたが、行き着く先は反対で特に印象に残りました。「トリケラトプス」はほんとヒヤヒヤしたもんですけど、ちょっとほっとしたような。と思うのも、死んでる側がとりついてるものがある、ということを読者である自分が知ってるからなんでしょうけど。

 好きだったものの傍の何かにとりつくことができても、ささやくこともできず、見てるだけしかできないというのは歯がゆいんじゃないかなあ。自分だったら何になる? と考えてみたけど、今のところこれといったものは思いつきませんでした。

 

収録内容
ロージン/トリケラトプス/青いの/白檀/名前/ささやき/日記/マッサージ/くちびる/レンズ/番外篇 びわの樹の下の娘

 番外篇はちょっと鳥肌が立ちました。