上遠野浩平著、『ブギーポップ』シリーズの読書記録をまとめました。8作分、途中までです。そしてかなり古いです。
新装版が出ている巻は新装版の書影リンクも貼りました。私が楽しいだけです。
絵:緒方剛志
『ブギーポップ』シリーズ
『ブギーポップは笑わない』
君には夢があるかい? 残念ながら、ぼくにはそんなものはない。でもこの物語に出てくる少年少女達は、みんなそれなりに願いを持って、それが叶えられずウジウジしたり、あるいは完全に開き直って目標に突き進んだり、また自分の望みというのがなんなのかわからなかったり、叶うはずのない願いと知っていたり、その姿勢の無意識の前向きさで知らずに他人に勇気を与えたりしている。これはバラバラな話だ。かなり不気味で、少し悲しい話だ。――え? ぼくかい? ぼくの名は〈ブギーポップ〉――。
(引用元 https://dengekibunko.jp/product/boogiepop/321809000032.html)
テンポのよい話。短編連作集みたいな感じ。1つ1つの章でメインのキャラは変わるのですが、根底というか話の軸は変わらず、ブギーポップが関わったとされる1つの奇怪な事件を中心に回っています。前半はブギーポップや、いわゆる彼あるいは彼女のいう「敵」についてのさわりだけで、あまり事件性というものはありません。が、後半はその事件について・前半で語られなかった事件の裏側についてが書かれています。
この作品は構成もすごい! のですが、それと同じくらいに登場人物の心理表現がリアル! キャラの心理描写がなくても、そのキャラの行動にはこんな感情があったのではないか、と容易に想像できる。
恋をして、勉強をして、普通に生活していた少年少女達。事件(というか、ブギーポップの言うとおりそれは人類にとっての危機なのだけれど)もとりあえずは解決し、人類も救われた。ブギーポップやエコーズ、それからちょっとした優しさで。事件の中でたくさんの子が傷付いてるけど、まだ自分達はやっていけると思えるようなそんなラストでもあります。読後感も結構いいなあと思います。しみじみ。
途中で姿を見せないなあと思っていた田中くんが、まさか弓を持って帰ってくるとは思いませんでした。新刻さん同様逃げたとばかり思ってました。勇気があるというか、怖いから逃げようって気持ちよりやらなければ、とう気持ちの方が強かったんだな。そこら辺もちょっとした救いですよね。
★新装版(だいぶ雰囲気が違うような気がするが、同じイラストレーターさんなんだなあ。まあ古い作品だしな)
『ブギーポップ・リターンズVSイマジネーター Part1』
ブギーポップシリーズ。前作に出てきたキャラもやっぱり何人か出てきます。前作よりも恋愛色強め。
といっても、これはブギーポップ。ラブコメとかではありませんが。谷口くんと織機さんの恋の話は優しくて、だからこそ切なかったです。一方、スプーキーEによって洗脳されて、事件に巻き込まれ、大事なこと・感情(恋のような憧れのようなそれ)を失くしてしまった安能くんにも物悲しいものがあります。特に、校門のところで自分でもわからないのに泣いてしまうというシーン。こちらはサブストーリーなんですが、ほんと切ないです。
表紙のイラストのブギーポップの瞳が印象的でした。
★新装版
『ブギーポップ・リターンズVSイマジネーター Part2』
VSイマジネーター、完結、であってますよね? 最初にイマジネーターだと名乗った不思議な女の子、という存在は消えてしまったみたいですから。
イマジネーターの言ってることは魅力的かもしれないし、なんかすごいなあとも思ってしまったりするけれど、やっぱり怖いことなのかもしれない。飛鳥井は自分に見えている人間のヴィジョン・薔薇のような花でその人の性格なりなんなりを見極めてその人にあったものを与えて、みんなを同じようにするということに似たことをやってたけど、それを続けて行っちゃうと世界中が同じ人間になっちゃうってことになりませんか。(解釈おかしいかもしれません)誰かに決められたように動くのは楽だけれど、やっぱり自分の道は自分で決めたいよなあ。イマジネーターがやってることって、ほんとスプーキーEのやってることと変わりありませんもんね。
しかし、ブギーポップって強いなあ。宮下さんと同じであっても別物だってわかってはいるんですが、身体能力すごすぎ! と思ってしまいます。特に銃撃戦のところとか。なかなか掴めない彼(彼女?)の性格も結構好きです。「君を助けようと言い出したのはぼくじゃない。ぼくは頼まれただけだ」「君はほんとうにそれが誰なのか、わからないのかい?」なんかまどろっこしい台詞も好きだったりします。
ラストの谷口くんと織機さんが可愛かったです。終わったんだなあ、と思います。合成人間だろうがなんだろうが谷口くんはあんまり気にしなさそうです。
★新装版
『ブギーポップ・イン・ザ・ミラー「パンドラ」』
話の時間軸としてはおそらくシリーズの第1弾と第2弾の間かと思われます。
主要な登場キャラである6人の少年少女は皆至って平凡。ただ、他の人にはない「未来を予知する」能力を持っていること以外は。
最初、この6人には接点というものがなかった。しかし、その自身が持っている能力のおかげで出会い、行動を共にすることで不思議な縁というか友情が深まっていく。それは、同じ予知能力を共有することだけで繋がっているような、曖昧なものにも見える。けれど、読んでいるうちに6人の間にあるものが、紛れもない友情だということがわかった。
キトという少女を助けることになったのも、運命のように見えて、でもやっぱりあの6人が自ら選んだ道なんじゃないかな、と。道に降り積もる雪の中、もしあの6人がキトを助けなかったら世界は滅亡していたのかもしれない。そう思うと、なんだか不思議な感じです。彼らはあの時、自分たちの肩に世界の命運が乗ってるなんて思ってなかったでしょうから。
ブギーポップは今回はほんとに少ししか出てきませんでした。いいとこどりのような気がする。でも、いつもピンチの時にでてきますよね。少し遅いような気もしますけど。炎の魔女も健在でした。あの子、いい子ですよね。
スプーキーEって人が「VSイマジネーター」に出てきましたが、この話にも少しだけ出てきました。Eはエレクトリックの略のようです。なるほど。ところで、統和機構ってなんのための組織なんでしょうね。
『ブギーポップ・オーバードライブ歪曲王』
誰にだって心に歪みというか、何かずっと引っかかってたりすることがあると思います。
その引っかかりをなくして楽にしてくれる。それが歪曲王がやっていること。別にそれが悪いことだとは思わなかったけど、ブギーポップも別に敵と認識していたわけではないようで、今回の敵は歪曲王じゃなかったようです。歪曲王の正体が結構意外な人で、いなくなっちゃうのは寂しいなと思っていたのでよかったです、とりあえずは。また登場するんでしょうか…。
今回は割と序盤からブギーポップは出てきてますね。「イマジネーター」や「パンドラ」では後半にちょっとだけという気がしたので、活躍する姿はよかったです。登場キャラも「ブギーポップは笑わない」でのキャラが多数登場してます。なので、なんとなく懐かしいような感じがしました。ある意味、「ブギーポップは笑わない」の続編というか。いや、続編っていうのはもちろんなんですけど、どう言葉で表現したらいいんだろう…。
「笑わない」というブギーポップがこの作品では笑顔を見せたり、その辺やっぱりこの作品でキャラたちにたくさんの変化(心情とか色々)があったと思います。話としては、健太郎がんばれ! って感じでしょうか。彼はなんか応援したくなります。
★新装版
『夜明けのブギーポップ』
この巻はブギーポップの誕生、名前の由来なんかをブギーポップ自身が語る短編連作形式になっています。今までのシリーズに出てきた人物もちょこちょこ出てきていたり、他の巻での事件のことがちらりと出てきたりしているので、シリーズ通して読んだ方が「なるほど!」とか「そういうこともあったね」なんて思えたりして楽しいかもしれません。一応この巻だけでも楽しめます。
忘れてはならないのが、<炎の魔女>こと霧間凪の存在。今までの作中にもちらちらと過去のことが伏線のように書かれていたりしましたが、この巻のブギーポップの誕生話の中に、彼女の過去のことが書かれています。彼女の父親のことも。この過去があるから、今の(シリーズの中の)霧間凪がいるんだな、というのがわかります。この巻の中では「霧間凪のスタイル」が一番好きです。人の感情(あれは人とは呼ばないのかもしれませんが)は理屈では語れないんだなと思いました。
★新装版
『ブギーポップ・ミッシング ペパーミントの魔術師』
ブギーポップがいう「世界の敵」というのが彼の敵になるわけですが、今回のその世界の敵というのがほんとどうしようもないくらい優しくて純粋の人でなんとも憎めない感じでした。軌川十助もこの話もまさにペパーミントのアイスのようだと思いました。人の痛みになるというのはどんな感覚なんだろう。あって得するような能力だとは思わないけど、使いようによってはやっぱりブギーポップのいうとおりなんだろうと思います。あんまり理解できてないんですが。
ずっと一緒だと信じて疑わなかった人たちに先立たれて、置いていかれて、周りに何もいなくなってひとりぼっちになるというのは言葉では言いあらわせないようなものがあると思います。それでもひたすらに人の痛みを和らげる(なくす)アイスを作り続ける十助の姿は読んでてなんか痛々しくも感じました。あと、基本的にみんな不器用なんだなとも思いました。
複雑な人間関係の仲の他人に対する人間の態度というか、そういうのの些細な変化というか、その辺の描写が鋭くて、なんとなくドキリとしました。あと、不器用な登場人物に見ててじれったくなったりも。全体的に切ない話です。十助はこれからどうするんだろうか、なんて思いながら読了しました。やっぱりアイスを人々に渡したりしてるんでしょうかね。
なんだか無性にアイスクリームが食べたくなります。自分にはどんなアイスが似合うんだろうかと考えました。
『ブギーポップ・カウントダウン エンブリオ浸蝕』
前後編のようなので、まだまだわからないこともあったりしますけど、今までの巻で出てきたことなんかがちらちらと出てきてニヤニヤしてしまいました。この調子でどんどん謎が解けていくことを願います。
この物語のキーになるのはゲームの中にあるエンブリオ。人が内に秘めている能力を開花させる力があるということですが。ぱっと説明聞いた感じじゃそんなに悪いものでもないと思うんですが、使い方次第ってことなんですかね。
今回は心理描写とかより戦闘描写が多くてバトル好きとしては燃えました。フォルテッシモとイナズマの戦いはひとまずフォルテッシモの勝利でしたけど、後編でのイナズマの成長にちょっと期待してみたり。あとは前編ではあまり出番のなかったブギーポップの活躍も。