文字を食べる

読書の備忘録ブログです。

光原百合『星月夜の夢がたり』

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画 / 鯰江 光二

遠い昔の思い出や、幼い頃に聞いたお伽噺、切ない恋の記憶……。32篇の物語を美しいイラストで彩った、宝石箱のような絵本
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167717346


 「宝石箱のような絵本」まさにそれです。1つの話は短いし、綺麗な挿絵もところどころに散りばめられているので、活字が苦手な人でも簡単に読めると思う。その挿絵というのが甘すぎない短編にぴったり。文体も好み。

 どの短編も良作で選びづらいけど、特に気に入っているのは「エンゲージリング」という短編。そういうプロポーズの仕方もあるんだなあと新鮮に思いました。本のページが終わるのが残念に思える本でした。

収録話

星夜の章
春ガキタ/塀の向こう/カエルに変身した体験、及びそれに基づいた対策/暗い淵/地上三メートルの虹/ぬらりひょんのひみつ/三枚のお札異聞/いつもの二人/もういいかい/絵姿女房その後/遙かな約束

月夜の章
海から来るモクリコクリ/鏡の中の旅立ち/萩の原幻想/かぐや姫の憂い/赤い花白い花/チェンジ/エンゲージリング/無言のメッセージ/お天気雨/隠れんぼ/天馬の涙

夢夜の章
ある似顔絵描きのこと/真説耳なし芳一/大岡裁き/いなくなったあたし/トライアングル/天の羽衣補遺/大食いのこたつ/目覚めの時/アシスタント・サンタ/遙か彼方、星の生まれるところ

好きな一文

「誰かがひどく辛いことがあって、でも泣くわけにはいかなくて、我慢して我慢して、それでも涙がこぼれてしまったとき――空が雨を贈ってくれるの。その人の頬を濡らすのが涙だとわからないように。だからお天気雨って、とても優しいけれど、とても悲しいの」
(お天気雨、より)