絵:佐竹美保
英米ホラー小説に精通した訳者自らが編んだアンソロジー. E.A.ポー,サキ,ロード・ダンセイニ,フレドリック・ブラウン,そしてロアルド・ダールなど,短編の名手たちによる怖くてクールな13話.全編新訳.
(引用元 https://www.iwanami.co.jp/book/b269809.html)
これぞホラーというものから、ちょっぴりユーモアが含まれるものまで、色々なホラーが楽しめる短編集。岩波少年文庫から出ているので、一応児童書なんですが、大人でも十分楽しめる内容かと。印象に残ってるものの感想を少しずつ。
ポーの「こまっちゃった」の原作の翻訳は「ある苦境」とのこと。これだけ異彩を放ってるなあと思って読んでたんですが、あとがき読んでなんか納得しました。おもしろい部分だけをとって、現代風に書き直したのだとか。どうりで地の文がはじけてるわけです。
「八月の暑さのなかで」なんて言えばいいんだろう。よくわからない奇妙な怖さがある。
「ブライトンへ行く途中で」ラストの台詞で一気に寒気が。
「開け放たれた窓」は最後のオチに思わず笑ってしまった。ネタバレすると面白くなくなると思うので、ここでは書きませんが。
「顔」は児童向け、というより一般向けのような感じがした。幻想的な雰囲気。やや切なめの話でした。
「もどってきたソフィ・メイスン」、この話にもホラーなだけあって幽霊が登場しますが、その幽霊以上に人間が恐ろしく感じられた。語り手もそう言ってますが。この世で一番恐ろしいのは人間かもしれない、ってやつですね。
「ポドロ島」結局あの島にいたのはなんだったのか。何が起こったのか。この短編集の中で一番不気味だと思った。後味が悪いです。いやーな感じです。
「十三階」恐怖がじわじわ来る感じ。時代の描写というのか、その辺うまく考えてあるんだなあと思う。怖かったけどおもしろかった。どうして主人公が例のエレベーターに乗ることができたのかは不明のままですが、ホラー小説というものは普通ではないことがよくあるもんですよね。
「だれかが呼んだ」これもラストの台詞で鳥肌が。そういや、そんな伏線あったなあ、と。ベル鳴らしたはやっぱり幽霊なんでしょうか。
「ハリー」最初は兄妹の絆というか家族愛的な感じだと思ってたんですが…。これもすごく怖かった。自分の目には見えないものと仲良くする子どもを毎日のように見るってどんな感じなんだろう。気がどうにかなるかもしれない。実際、この話の中の母親はどうにかなりそうだったわけだけど。二人はどこに消えたんだろう。
収録内容
「こまっちゃった」エドガー・アラン・ポー
「八月の暑さのなかで」W・F・ハーヴィー
「開け放たれた窓」サキ
「ブライトンへいく途中で」リチャード・ミドルトン
「谷の幽霊」ロード・ダンセイニ
「顔」レノックス・ロビンスン
「もどってきたソフィ・メイスン」E・M・デラフィールド
「後ろから声が」フレドリック・ブラウン
「ポドロ島」L・P・ハートリー
「十三階」フランク・グルーバー
「お願い」ロアルド・ダール
「だれかが呼んだ」ジェイムズ・レイヴァー
「ハリー」ローズマリー・ティンパリ