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小野不由美『十二国記』シリーズ

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 小野不由美著の『十二国記』シリーズの読書記録をまとめました。途中までです。(『黄昏の岸 暁の天』まで)
 自分だけが楽しい感じですが、複数の書影リンクを貼っています。
 ※かなり古い読書記録です。初期に読んだのはホワイトハート版でした。

 イラスト:山田章博

『十二国記』シリーズ

『月の影 影の海 上』

「お捜し申し上げました」──女子高生の陽子の許に、ケイキと名乗る男が現れ、跪く。そして海を潜り抜け、地図にない異界へと連れ去った。男とはぐれ一人彷徨(さまよ)う陽子は、出会う者に裏切られ、異形(いぎょう)の獣には襲われる。なぜ異邦(ここ)へ来たのか、戦わねばならないのか。怒濤(どとう)のごとく押し寄せる苦難を前に、故国へ帰還を誓う少女の「生」への執着が迸(ほとばし)る。シリーズ本編となる衝撃の第一作。
(引用元 https://www.shinchosha.co.jp/book/124052/


 有名な異世界ファンタジー。アニメから知って、原作が気になって読みました。原作のおもしろさよ! 読んでよかった! アニメはやはりオリジナルな展開が多いんだなあ。
 難しい漢字が多いせいか、内容も難しいような気がしてしまうけど、それが気にならないくらいおもしろくて一気に読めた。設定が細かくて、よく練られてるなあと思う。心理描写もすごい。

 この上巻の陽子は弱くて、汚いところもあって、読んでいてちょっと腹が立つこともあった。だけど憎めないのは自分にも同じようなところがあるからだろうと思う。自分の知らない異世界なんかに突然連れてこられたら誰だって絶望すると思う。死にたいって思うかもしれない。それでも生きるのだと決めた陽子。蒼い猿に何を言われても生きることだけは諦めてはいない。まだ陽子は人間不信っぽいけど、これからしっかり成長するところが見れるんだろうな。応援したくなる主人公です。

★講談社のホワイトハート版




『月の影 影の海 下』

 上巻はとんでもなく暗くて、それに続いてこの下巻でも陽子の心は人を信じることが出来ず、醜かった。だけど、人は変わることができる。「裏切られてもいいんだ」という陽子の言葉には強いものを感じました。楽俊との巡りあいはまさに幸運だったと思う。もちろん延王や延麒もだけど。景麒と誓約を交わすシーンが好き。
 その他箇条書きで少し
・楽俊の歩き方の効果音が「ほたほた」なのが可愛い。
・「ふり向くなよ。今ちょっと障りがあるからな」障りって…笑
・景王陽子、姓は中嶋、字は赤子、胎果の生まれなり。…ここも好き。ここを読むとアニメでの子安氏の声を思い出す。なんだか嬉しそうな、そんな声に聞こえたから。

 塙王はあまりに人間らしく、浅ましい考えを持った人だったけれど、どうにも憎むことはできませんね。嫉ましいとか、負けたくないとかベリは嫌だとか、きっと誰にでもどこかにある感情だから。それが行き過ぎたってだけで。塙麟はただ可哀想だと思う。麒麟の性というものはやっかいなものだとも思う。難しいです。

★ホワイトハート版




『風の海 迷宮の岸』

幼(いとけな)き麒麟に迫り来る決断の時──神獣である麒麟が王を選び玉座に据える十二国。その一つ戴国(たいこく)麒麟の泰麒(たいき)は、天地を揺るがす〈蝕(しょく)〉で蓬莱(ほうらい)に流され、人の子として育った。十年の時を経て故国(くに)へと戻されるも、役割を理解できぬ麒麟の葛藤が始まる。我こそはと名乗りを挙げる者たちを前に、この国の命運を担うべき「王」を選ぶことはできるのだろうか。
(引用元 https://www.shinchosha.co.jp/book/124054/


 読んだバージョンがホワイトハート版なので上巻と下巻と感想わかれています。…文量は少なめですが。

上巻分
 十二国記シリーズの続きです。が、「月の影 影の海」に登場した陽子は出てきません。
 今作は陽子があちらの世界へ行く、何年か前の話。メインで登場する泰麒のかわいらしいこと。彼の純粋さは読んでいて微笑ましかった。その純粋さ・優しさが景麒まで変えてしまうなんで。(でも、それで先の王が道を見誤ったと思うとなんだか切ない)女怪や女仙とのふれあいも優しくて、前作とはまた違った十二国記の世界が楽しめました。

下巻分
 上巻では、泰麒はまだまだ子供だという感じばかりしたけども、下巻では大事なものに対する意志の強さを感じることができた。天啓がない人を王にしてしまったという負い目を持っていたり、その王をずっと監視というか見守っていたりと、自分が麒麟であるという自覚をし、責任感も持ち始めている。
 でも、やっぱり純朴な泰麒はいいですね。かわいい。延王や六太のやり取りもおもしろかった。平気で王を殴る麒麟って…。戴に王が即位されたという知らせを聞いたときの景麒の反応がまたいい。かすかに笑みをもらした、ってほんとに泰麒の力は偉大ですね。特に「景王舒覚は自国の麒麟の珍しい笑みに一瞬呆けた。(抜粋)」という文に思わず笑ってしまいました。

★ホワイトハート版





『東の海神 西の滄海』

国が欲しいか。ならば一国をやる。延王(えんおう)尚隆(しょうりゅう)と延麒(えんき)六太(ろくた)が誓約を交わし、雁国に新王が即位して二十年。先王の圧政で荒廃した国は平穏を取り戻しつつある。そんな折、尚隆の政策に異を唱える者が、六太を拉致し謀反を起こす。望みは国家の平和か玉座の簒奪(さんだつ)か──二人の男の理想は、はたしてどちらが民を安寧(やすらぎ)に導くのか。そして、血の穢(けが)れを忌み嫌う麒麟を巻き込んだ争乱の行方は。
(引用元 https://www.shinchosha.co.jp/book/124055/


 「月の影 影の海」「風の海 迷宮の岸」にも登場した雁国の2人がメインの話。2人が好きな方にとってはかかせないのでは。
 尚隆が王となった経緯、そして今の雁が出来るまでにあった出来事等が書かれています。更夜と妖魔の身の上など悲しいところは悲しく、尚隆を初めとする雁国の人々の会話・掛け合いはおかしみがある。尚隆は暢気ではあるが、やっぱり考えてるんだなと改めて思いました。民をまず第一に考えている。これからも長続きしそうな国ですね。

 ところでこの話では悪(役?)な斡由ですが、なんだか寂しい人だと思いました。自分のためだけに臣下を平気で切り捨てられるなんて、この人が王になったらと思うとぞっとする。


★ホワイトハート版




『風の万里 黎明の空 上』

人は、自分の悲しみのために涙する。陽子は、慶国の玉座に就きながらも役割を果たせず、女王ゆえ信頼を得られぬ己に苦悩していた。祥瓊(しょうけい)は、芳国(ほうこく)国王である父が簒奪者(さんだつしゃ)に殺され、平穏な暮らしを失くし哭(な)いていた。そして鈴は、蓬莱(ほうらい)から辿り着いた才国(さいこく)で、苦行を強いられ泣いていた。それぞれの苦難(くるしみ)を負う少女たちは、葛藤と嫉妬と羨望を抱きながらも幸福(しあわせ)を信じて歩き出すのだが──。
(引用元 https://www.shinchosha.co.jp/book/124056/


 違う場所にいる全く異なる3人の娘たちが、それぞれ違う目的・想いを持って慶へ向かう。といっても陽子は慶にいるのですが。最初はばらばらの視点が徐々に複雑だけれども絡み合う…。今までの話とスタイルが違っているような気がして新鮮でした。

 祥瓊も鈴も初めは「自分だけが可哀想」という風に思っていて、どうしようもないんだけど、たくさんの人との出会いで良いほうに変わっていく姿は読んでいて清々しいです。祥瓊側のストーリーで、知らないことも罪になるんだなと思い知りました。下巻での彼女達の出会いが楽しみです。楽俊が雁で借りたと言うスウグ(漢字がわからないのでカタカナ)の名前が「たま」なところに笑いました。尚隆が付けたんでしょうかね。

★ホワイトハート版




『風の万里 黎明の空 下』


 今まで読んできた中で一番好き! おもしろかった! 上巻では、まだまだ未熟だった3人の娘たちの成長っぷりが良い。怖気づくこともなく、凛と名前を名乗る彼女らに、良い意味で鳥肌がたちました。
 鳥肌がたったといえば、陽子が景麒に乗って王だと名乗り、軍を引かせる場面もそう。信頼できる者たちに出会えたことは王である陽子にとってかなりのプラスだと思う。「伏礼を廃す」という初勅も陽子らしいと思いました。


★ホワイトハート版




『黄昏の岸 暁の天』

王と麒麟が還らぬ国。その命運は!? 驍宗(ぎょうそう)が玉座に就いて半年、戴国(たいこく)は疾風(はやて)の勢いで再興に向かう。しかし反乱鎮圧に赴(おもむ)いた王は戻らず、届いた凶報に衝撃を受けた泰麒(たいき)も忽然(こつぜん)と姿を消した。王と麒麟を失い、荒廃へと向かう国を案じる将軍は、命を賭(と)して慶国(けいこく)を訪れ、援助を求める。戴国を救いたい──景王陽子の願いに諸国の麒麟たちが集う。はたして泰麒の行方は。
(引用元 https://www.shinchosha.co.jp/book/124061/

 ホワイトハート版を読んだときの感想なので、上巻・下巻と感想がわかれています。文量は少なめです。

上巻分
 今回も面白くてすらすらと読めました。今回は「風の海 迷宮の岸」でもお馴染みの戴国の話でもあります。もちろん、陽子たちもろもろのキャラも登場します。
 主なのは泰王と泰麒がいなくなってからの戴国の話。そして、李斎と花影の友情の話。

 誰を頼っていいのかわからない、という四面楚歌だったという李斎の状態はさぞかし辛かっただろうなと思う。それに比べて、陽子には心から信頼できる人たちが傍にいてくれるので、心強いんじゃないかな。それと同様に、方法はちょっと問題があったのかもしれないけど、満身創痍になってまで、戴国を救ってほしいと一人掛けてきた李斎という人が自分の下にいる。驍宗にも頼りになる人がいるってことですね。

下巻分
 下巻もやっぱり面白い! ちょっとホラー要素も含まれています。
 戴国のために奔走する人々はただ愛しく、魅力的。今回、新キャラでは氾王と氾麟がでてきました。まあ、なんというか愉快な方たちですよね。(まるでバカップルみたい…)とても味があります。延王たちとの関係も好きです。天敵ってやつなんでしょうか。

 泰麒を探すために尽力をつくしたのは、やっぱり同族の麒麟たちでしょうね。特に六太と景麒の力の入れようったらない。泰麒が見つかったあとの驚きようも…。
 でも、廉麟もかなり重要だったんじゃないかな。彼女が転変してみせたから、泰麒も記憶を思い出したわけですし。ところで、廉麟って綺麗ですよね。かなり好みの外見であります。

 十二国記の中の神ってなんなんだろうと思う。神はいないらしいし、最終的に決めるのは「天」なんだけれども、その天の意思を届けてくれるのは誰なんだろう。その辺のことが少しだけ明らかになってました。李斎は天が自分たちを見ているというならば、何故お助けくださらないのかと叫んだ。全くだと思う。ほんとに痛々しい叫びでした。だけど、たぶん天というのは何かを助けるための存在ではないんですよね、ここでは。あくまで何かを決定する場所であり意思。難しいです。

 陽子と泰麒(高里要)のファーストコンタクトはなんだか感慨深かったです。同世代ということもあって、話がしやすそうかも? 政治とか蓬莱での体験を話すときとか。国の方が落ち着いたら、国交も盛んになりそうです。
 ところで、戴国は今後一体どうなるんでしょう。無事に2人とも戴に戻って、泰王と会えるといいんですけれど。

★ホワイトハート版



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