文字を食べる

読書の備忘録ブログです。

アイリーン・M・ペパーバーグ『アレックスと私』

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カバーイラスト/カシワイ
ハヤカワ文庫NF

人と動物は、音声を用いて会話できるのか? はるかな目標を掲げた研究者と一羽の天才ヨウムが過ごした、長くて短い30年の物語。
https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014652/


 アレックス――この愛すべきヨウムと著者であるペパーバーグ博士の30年の研究の軌跡を書いた本。
 ヒトと鳥は言葉で交流できるのか。鳥の認知能力は? 開始当時は研究とすら認めてもらえなかったこの研究をずっと続けてこられた博士の根気強さ、それに協力してきたアレックスと皆さん。さまざまな結果を残した彼らを尊敬する。もう「鳥頭!」っていう罵り言葉は使えないかもしれません。

 それにしてもアレックスはチャーミングというか、憎めない鳥だなあ。本書では鳥たちが放つ言葉がわかりやすいよう、カタカナ表記されているのだが、それがまた可愛らしい。人知れずこっそりラベルの発音の練習をしたり、甘えてみたり、威張ってみたり、ほかのヨウムの訓練に茶々を入れたり…本当に愛すべき鳥。インコのぬいぐるみへの反応のエピソードがかわいかった。ぬいぐるみに「ナデテ」と話しかけ、相手がちっとも動かないのを見て「バカドリ!」と言い放つ。賢いよ、ほんとに。
 アレックスが亡くなっていることは冒頭の話でわかっていたことだったが、その場面はとてもつらく、彼が最後に博士にしゃべった言葉にまた涙した。「イイコデネ。アイ・ラブ・ユー」アレックスはわかっていたのかな?

 鳥の愛好家ではないし、研究者でも研究に興味があるわけでもないけれど、すごく楽しく読めたし、門外漢でもすらすら読めた。読んでいて思ったのは研究者の大変さ。資金繰りに研究場所の確保…。研究内容も関係しているのかもだけど、アメリカでもなかなか難しいんだなあ。