文字を食べる

読書の備忘録ブログです。

神永学『天命探偵真田省吾』シリーズ

  当サイトの記事には、広告・プロモーションが含まれます

 神永学の『天命探偵真田省吾』シリーズの読書記録置き場。
 4巻まで。

天命探偵真田省吾シリーズ

『タイム・ラッシュ』

真田省吾、職業は探偵。養護施設で育ち、元警視庁の敏腕刑事に拾われ事務所に住み込みで働いていた。ある日、謎の美少女から奇妙な依頼が持ち込まれる。
https://www.shinchosha.co.jp/book/133671/


 本の内容紹介に「不死身のイケメン探偵」とあったのですが、本読む前にこの文見たら、なんか誤解しそうだと思う。不死身はちょっと言いすぎじゃあ……。強ち間違ってるともいえないけども。
 心霊探偵八雲シリーズ読んだその延長で読んでみたんですが、なかなか楽しかったです。この天命探偵シリーズの主人公とヒロインの二人は、八雲シリーズの主人公ヒロインとなんだか逆の印象を受けました。でも、足して丁度良い感じは同じですね。ただ真田は無鉄砲なとこがあるので、些か読んでて不安ではあります。どんだけ怪我してんのって感じで。

 推理要素もある作品ですが、麻薬密輸の主犯が誰だとか、志乃のお父さんの行動の理由だとかは割りとよくあるパターンだと思うので、わかりやすかったですね。でも、最初読んでた時は国が関わってくるもんだとは思ってなかったなあ。そういう話だと思ってなかったので。
 散々な身の上になってしまった志乃が、今後真田のところの事務所でどういう働きをすることになるのか気になります。公香とのやり取りとかも。ラストで殺人現場の夢は見なくなったと言っていたけど、それって同時に予知夢も見なくなったってことなんでしょうか。あと、タイトル(シリーズ名?)に天命探偵って付けられてるのはなぜなんだろう。この話だけじゃわかりませんでした。今後少しずつ核心に触れてくんでしょうか。


※単行本



『スナイパーズ・アイ』

銃器密売組織の男が護送中に殺された。凶器はSAT狙撃班が装備する最新型ライフル。白昼堂々の犯罪に潜むメッセージをさぐるうち、五年前の立て籠もり事件が浮上する。
https://www.shinchosha.co.jp/book/133672/


 立てこもり事件で被疑者が人質を取っている場合の警察の対応、犯人に引き金を引くことができるのか否かとか、その辺が問題となって起きた事件。日本人の危機意識などの点にも触れられてました。凶悪な事件が起きても、所詮は他所のことだ、という考えは誰にでもありそうですね。実際に遭遇しないとわからないというか。現実でもよく問題視されてることのように思います。
 八雲シリーズに比べて、事件が大規模で関わる人の人数が多いのがこっちのシリーズの特徴のように思いますが、今回もそんな感じでした。「イチゴの国にサンタはいない」はなかなか面白かったです。ヒントがない段階だとただの意味わからない言葉の羅列ですもんね。

 前回の事件が終わってから予知夢を見なくなった志乃ですが、今回また夢を見るようになります。依頼に来た人物と一緒にきた女の子に会ったのが発端みたいですけど、この夢を見る切っ掛けにも何か条件があるんでしょうか。あと、志乃が夢で行われる殺人に対し、何らかのリアクションをとることで(「逃げて!」と叫ぶとか)それを真田が現実の場で耳にして(幻聴?)危機を回避しようとする、という流れがあるように思われるのですが(変な文章になってて申し訳ない)、それが天命探偵というシリーズ名になる理由みたいなものなんですかね。……だんだん自分で書いてることがわからなくなってきました。
 ともかく、真田の行動力はすごいと思う。公香が志乃を恋のライバルと認めましたが、真田と志乃はどうなんですかね。好意は持ってるとは思うんですが、なんか難しいところですね。こっちの関係も気になります。
 今回の事件で関わった鳥居親子を事務所に勧誘した真田ですが、次回作にも登場するんでしょうか。メンバーに入って大所帯になるのもまた楽しそうです。
 ところで、警視庁の亜沙美さんですが、あの人柴崎刑事との一悶着の後のフォロー(というか補足?)みたいなのがなかったように思うんですけど、何か記述ありましたっけ? 読んで忘れてるだけだろうか。なんかすっきりしないというか、柴崎刑事のあれは正当防衛みたいな感じで終わるんですかね。


※単行本




『ファントム・ペイン』

麻薬王“亡霊”の脱獄。それは凄惨な復讐劇の幕開けだった。予知夢を見る美少女・志乃が予言する仲間たちの死。追いつめられる探偵チーム。そして、明かされる山縣と公香の過去。狂気の王が生み出す怨嗟の螺旋は、警察や公安をも巻き込み、関わった者すべてを奈落の底へと突き落とす──。
https://www.shinchosha.co.jp/book/133673/


 八雲シリーズにも言えるし、毎度のことなんですが、この作者の本はいつもさらっと読めてしまう。描写がくどくないからでしょうか。でも、そのキャラを描写するのに同じ描写を何度も使ってるので、なんとなく飽きはくるけど、そのキャラがどういう外見なのかというところは記憶に刻まれやすい感じです。

 このシリーズの主人公の真田は打たれ強いといいますか、色々と危なっかしいんだけど、こいつなら大丈夫だという妙な安心感があるのですが、今回は相手が相手なだけに絶体絶命って感じで冷や冷やさせられました。真田だけでなく山縣さんや公香まで大変な目に遭いましたし。まあ、事件も一応解決したのは何よりですけれど。
 ラストの公香と黒木のやりとりはなんだか温かくて、ちょっと前まで命のやりとりをしていたことなど嘘のようでした。公香の過去には本作で初めて触れられますが、この人も大変な過去を持っているんだなあ。どん底から這い上がって来れたのは彼女の強さもあるんだろうけど、やっぱり出会った人のおかげですかね。山縣さんと公香が事件のあれこれで真田曰くちょっと良い感じになった、もとい絆を深めたようですが、真田と志乃はどうなんでしょうか。人間関係の変化も気になるところです。
 そういえば、前作に登場した鳥居さんが助っ人として今回また登場しましたが、あの人冷静だし腕もあるし頼もしいです。


※単行本




『フラッシュ・ポイント』

予知夢を見る美少女・志乃が感知した人の死。未来を変えるため真田は奔走するが、運命の改変が悲劇を招く──。
https://www.shinchosha.co.jp/book/133674/


 海上保安庁に核爆弾…どんどん規模が大きくなってる気がしてならない第4巻です。一気に読みました。やはり真田のハチャメチャっぷりというか活躍は読んでて爽快ですね。もちろんヒヤヒヤするんですけど。

 序盤はいつもどおりに進んでいくんですが、ほんと色々大変でした。真田はいつもどおりの無鉄砲さで怪我とは無縁ではいられないみたいですが、今回は他のメンバーたちも結構な大変な目に遭い…。特に志乃ちゃんが気に掛かります。彼女の容態はこの話の中だけでは進展も何もないまま次回に持ち越しになるようで、最悪の結果にはならないだろうとは思うものの心配ですね。真田の胸中なんかも書かれてて、本当居た堪れなかった。志乃の夢の中での邂逅はなんだか切なかったです。話せない彼女と話せることができるにしても、決して良い夢とは言えませんし。

 山縣さんの過去のこととかもちらっと出てきましたが、こちらもやりきれない感じになってしまいましたね。他人を信じぬくって口で言うより難しい。山縣さんが弱っていた分、頼りになる人が少なくなってしまって、若干読んでて不安にも思いましたが、そこは大人な鳥居さんがカバーしてくれてたように思う。やっぱり鳥居さんは技術面でも精神面でも頼りになるなあ。次の巻もファミリー調査サービスの皆の活躍に期待。そういえば触れ忘れてましたが、松尾が真田たち側の事情を説明されてましたね。志乃の夢の件については探偵たちだけではどうにもならないし、理解者協力者は多い方がいいですもんね。刑事さんたちの活躍にも期待。

※単行本