文字を食べる

読書の備忘録ブログです。

時代小説いろいろ 読了記録

  当サイトの記事には、広告・プロモーションが含まれます

 いろんな時代小説の読書記録。短めのものが多いのでひとつの記事にまとめました。
 一部の記録がかなり古いです。
 シリーズもので続きを読んだら別のページにまとめるかもしれません。
 装画は調べてわかったものと、メモってあるものだけ表記してます。

時代小説いろいろ

夢枕獏『陰陽師』文藝春秋

装画:村上豊

死霊、生霊、鬼などが人々の身近で跋扈した平安時代。陰陽師安倍晴明は従四位下ながら天皇の信任は厚い。親友の源博雅と組み、幻術を駆使して挑むこの世ならぬ難事件の数々。
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167528010


 時代小説に分けてしまったけど、なんか違う気もする。

 友人からおすすめしてもらって読んだもの。小難しそうっていうイメージが強かったんですが、ほんと面白かった! 巻末の作者の後書を読んでも、とても楽しんでこの作品を書いたのだなということがわかります。
 主要登場人物は陰陽師である安部清明と武士であり友である源博雅。その2人の掛け合いが好きです。その鬼だのなんだのが出た現場に行こうという場面での、「ゆこう」「ゆこう」そういうことになった。というくだりがツボでした。毎回同じで飽きるかと思えば全然そんなことはなく、むしろ彼等らしいなと思うのでした。清明という人物はクセがあるように書かれていると思うのですが、だから率直な博雅は彼と上手くやっていけるのですね。
 この作品の中には6編の短編が収録されています。怖くて不気味な話もありますが、そこまで恐ろしく残酷なものはないです。思わずくすっと笑ってしまうような話(「梔子の女」)や物寂しくなるような話もあったりします。
 特に「白比丘尼」は切なかったです。「人とは、いつか、死ぬのがよいのだな」という博雅の台詞、そして空からしんしんと降る真白の雪がより一層物寂しさを演出しているように思います。

★コミック版



藤沢周平『用心棒日月抄』

青江又八郎は二十六歳、故あって人を斬り脱藩、国許からの刺客に追われながらの用心棒稼業。だが、巷間を騒がす赤穂浪人の隠れた動きが活発になるにつれて、請負う仕事はなぜか、浅野・吉良両家の争いの周辺に……。
https://www.shinchosha.co.jp/book/124701/


 いろいろな時代小説を残している藤沢周平の作品のひとつ。
 1つ1つ独立した短編小説なのですが、すべてその背景に吉良、大石などといった日本史でも知られる人物が登場したり、赤穂事件がベースになっていたりします。

 この作品の魅力といえば、やはり登場人物だちの個性の豊かさ。主人公の青江又八郎は腕の立つ剣士で情の深い好漢。脇役の仕事の仲介をする吉蔵や同じ仕事仲間の細谷もいい味を出していて、作品を彩っています。それから1つ1つの短編の中に登場する女性キャラクターも艶やかであったり、可愛らしかったりと作品に華やかさや物寂しさなんかを与え、忘れてはいけない存在なのではないかと思います。
 どの短編も秀逸で、読後にも余韻を残してくれます。また、感情の描写だけでなく、風景描写も巧みで、目を閉じればその景色が目に浮かんでくるようです。この作品、他に3作出ているらしいので、続きもまた読んでみたいです。



畠中恵『しゃばけ』

装画:柴田ゆう

江戸の大店の若だんな一太郎は、一粒種で両親に溺愛されているが、めっぽう身体が弱い。そんな彼を、身の周りにいる犬神や白沢といった妖たちがいつも守っている。ある夜、一太郎は人殺しを目撃してしまう。妖の助けを借りて下手人探しに乗り出すものの......。
https://www.shinchosha.co.jp/shabake/series/978-4-10-450700-9.html


 ずっと読んでみたいと思っていた作品。時代ものファンタジー。ミステリーとしても楽しめます。どっちも好きなので、楽しんで読めました。妖怪系の話も好きなのです。シリーズの一作目ということで、とりあえず登場人物など設定覚えようと読み進めました。キャラ設定も好きです。妖たちがなんか可愛かったです。一太郎はこの先、松之助に会うことができるんだろうか。そんなことを考えつつ、次巻にも期待。

★コミック版

www.shinchosha.co.jp



高橋由太『ちょんまげ、ちょうだい ぽんぽこもののけ江戸語り』

あらゆる女性が振り返る美貌を持つ優男剣士・小次郎のパートナーは、可憐な少女に化けた狸――!? 一見仲睦まじい兄妹に見える二人が繰り広げる、もののけお江戸事件帖。
https://www.kadokawa.co.jp/product/201106000716/


 時代物のライトノベルといった感じ。前にも一度この作者の本は読んだことがあるけど、やっぱり読みやすい。ちょっとした息抜きにいい感じです。時代小説といっても堅苦しいことはなく、妖怪なんかもでてきてファンタジー色も強かったり。その分、時代小説が読みたい! という人には不満がでるかも。
 ぽんぽこが可愛かったです。玉子焼き好きという設定がまた可愛く、なんとも愛らしい娘(たぬき)です。
 楽しく読めましたが、終盤がちょっと置いてけぼり感。ちょんまげちょうだいのことは一応なんとかしてたけど、廉也のこととか弥生のこととかほっときっぱなしで終わってしまった気が…。続きものだし、まて次回ということでしょうか。



朝松健『ちゃらぽこ 真っ暗町の妖怪長屋』

装画:いわたきぬよ

本所業平橋の外れの外れ。場末の中の場末の町に、一軒のボロ長屋があった。住人たちは一見普通の町人だが、一皮剥けば、くせ者揃いの妖怪ばかり。そんな長屋に、ひょんなことから、旗本の次男坊・荻野新次郎が住むことになった。
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334764661

 青年と長屋に住む愉快な妖怪たちのドタバタ人情時代劇。キャラが良い味出していてなかなか面白かった。特に主人公の姉上が強烈でした。(他の家族もすごそうだけど)後半が怒涛の展開で、ちょっとついていくのが大変でしたが、軽いノリでさらりと読めるので、ちょっとした息抜きにいいかもしれないです。



西條奈加『善人長屋』

善い人ばかりが住むと評判の長屋に、ひょんなことから錠前職人の加助が住み始めた。実は長屋の住人は、裏稼業を持つ“悪党”たち。差配の儀右衛門は盗品を捌く窩主買(けいずか)い。髪結い床の半造は情報屋(ねたもと)。唐吉、文吉兄弟は美人局(つつもたせ)。根っからの善人で人助けが生き甲斐の加助が面倒を持ち込むたびに、悪党たちは裏稼業の凄腕を活かし、しぶしぶ事の解決に手を貸すが……。
https://www.shinchosha.co.jp/book/135774/


 面白かった!
 裏稼業を行う人々が集う長屋が中心の笑いあり涙ありの人情時代小説。長屋のたった一人の善人である加助の、過剰とも思える人助けぶりには少し思うところがあったのですが、ラストで明かされた事情で腑に落ちました。儀右衛門も納得したところで、やっと加助も善人長屋の仲間入りといったところでしょうか。奥さんとお子さんとまた一緒に暮らせたら一番だったんでしょうけど、お見合いさせる気満々のお縫さん。彼女と長屋の住民である文吉の仲も気になるところです。加助にも気づかれてるとか。気付いてないのは本人たちばかりって感じで微笑ましいです。続編もあるみたいなので機会があれば読みたいです。

★コミック版



藤井邦夫『御刀番 左京之介妖刀始末』

駿河国汐崎藩の御刀蔵から妖刀村正が盗まれた。徳川家に仇なす刀ゆえ、所持が公儀に知れれば汐崎藩の取潰しは必至。藩主から命を受けた御刀番・左京之介は村正の行方を追うが、その前に不審な忍びが立ちはだかる。
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334769130

 初めて読む作者さん。日本刀が出てくると聞いて読みました。
 妖刀村正は浪漫ですね。今回は家康が恐れた村正の刀にまつわる話。村正を所持を禁ずるという話は別の本でも何度か読みましたが、こういう創作で読むとまたおもしろいですね。今回は登場人物の人物像、背景がいまいち掴めなかったのですが、次の巻が出ているのでそちらも読んでみたいです。妖刀始末ということは、次も訳ありの刀と色々あるのでしょうか。



今井絵美子『さくら舞う 立場茶屋おりき』

品川宿門前町にある立場茶屋おりきは、庶民的な茶屋と評判の料理を供する洒脱で乙粋な旅籠を兼ねている。二代目おりきは情に厚く鉄火肌の美人女将だ。理由ありの女性客が事件に巻き込まれる「さくら舞う」、武家を捨てて二代目女将になったおりきの過去が語られる「侘助」など、品川宿の四季の移ろいの中で一途に生きる男と女の切なく熱い想いを、気品あるリリシズムで描く時代小説の傑作、遂に登場。
http://www.kadokawaharuki.co.jp/book/detail/detail.php?no=2621

 四季の移り変わりの描写が丁寧で美しい、立場茶屋が舞台の人情譚。茶屋の奉公人、客をめぐる事件に対するおりきの行動が見事。言い方を変えれば善意の行動も偽善になってしまうけれど、作中で出てきた「人は情けの器物」という言葉が行動のもとだったり、彼女自身の身の上もあって胸を温かくさせます。長いシリーズのようなので続きも読めたらなと思う。

 2017年に作者の今井絵美子さんが亡くなっていると知って、とても悲しい気持ちです。この本を読んだのは2016年の3月でした。

○立場茶屋ってなんだ? って読んだ当時思ったので、調べたやつ。
立場茶屋(たてばちゃや)とは? 意味や使い方 - コトバンク



土橋章宏『超高速!参勤交代』

装画:ホセ・フランキー

たった5日で参勤交代しろって? お金がない! 人手がない! 時間がない! 東北の弱小藩は意地悪なお上の無理難題にどう挑むのか
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000212034


 映画がおもしろかったので読んだもの。
 5日で参勤交代なんて、場所が場所だし無茶振りでしょうと思いながら読んだのですが、なんとかなるものですね。藩主の人望があったのが大きいのかな。テンポ良く、一気に読めました。おもしろかった。

★単行本
装画:ツジトモ(読んだのは単行本でした。ジャイキリの人だ~!って手にとった覚えがある)

★映画



朝井まかて『御松茸騒動』

こんな尾張に誰がした? 松茸が取れなければクビを覚悟! 江戸の松茸の大騒動!
https://www.tokuma.jp/book/b494947.html


 算術が得意な若き藩士の成長物語。読む前に想像していたより、騒動していなかったけど、コメディタッチな話で楽しく読めた。登場人物も魅力的。徳川宗春について、もう少し知りたくなった。


ja.wikipedia.org