文字を食べる

読書の備忘録ブログです。

恩田陸『麦の海に沈む果実』

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装画:北見隆

三月以外にやってくる転入生は、学園を破滅に導くだろう。
湿原に囲まれた全寮制学園。謎の失踪をとげる生徒たち。奇妙な学校行事と、図書館にあったはずの謎の本。──夜と昼をあやつり師が築く影絵のごとき大伽藍。
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000180030


 雰囲気があって、登場人物は一癖も二癖もあって魅力的。風景描写、心理描写も綺麗。かなり好きな部類の話です。学園小説が結構好きなので、それもあるかも。ぐいぐい物語に引き込まれました。面白かった!
 ただそうして引き込まれて読んでいったので、ラストの理瀬の過去・事情が判明する場面、これまでの事件の謎が判明する場面はやや駆け足気味に感じ、ちょっと置いてけぼり食わされた気分でした。あれ? と頁戻って読み返してしまいました。まあ、伏線はさり気なくあったので、気にするレベルではないのかもだけれど。もっと詳しく知りたい、もっと読みたい! という不満です。

 印象に残ったのは黎二と理瀬がワルツを踊るシーン。美しい光景なのに、黎二の口から語られるのは酷な過去で。その後の展開もあって、すごく切ないですね。張出窓から湿原を眺める横顔とかも頭に残る場面ではありますが。彼はこの話の中で一番好きかも。ぶれないというか、最後まで真摯で一番信用できるというか。理瀬も好きだけど、彼女はほんとラストに色々と驚いた。親衛隊に笑いかけるところは怖いとも思う。同時にかっこいいとも思うけど。
 続編やこの話の登場人物がでる話があるということなので、それも読みたい。理瀬のその後はかなり気になります。

★単行本