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読書備忘録ブログです。

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宮部みゆき『おまえさん』上・下

『おまえさん』上

おまえさん(上) (講談社文庫)

おまえさん(上) (講談社文庫)

装画:村上豊

痒み止めの新薬「王疹膏(おうしんこう)」を売り出していた瓶屋の主人、新兵衛が斬り殺された。本所深川の同心・平四郎は、将来を嘱望される同心の信之輔と調べに乗り出す。検分にやってきた八丁堀の変わり者“ご隠居”源右衛門はその斬り口が少し前に見つかった身元不明の亡骸と同じだと断言する。両者に通じる因縁とは。
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784062770729


 またしてもシリーズものをそれと知らず読み始めてしまいました。これだけでも楽しめますが、ところどころに出てくる過去の事件が気になるのでいずれ前作も読みたい。読んでいるとき、なぜかおでこたちの設定を知っているような気がして、シリーズ読んだことないのにと不思議に思ってたんですが、それは『ばんば憑き』の方に短編があったからなんですね。聞いたことはずっと頭に入ってる、というおでこの設定は印象に残ります。それにしても弓之助と三太郎のコンビは微笑ましい。

 楽しかった! 宮部さんの時代物好きだなあ。かなりの数の登場人物なので、設定把握や境遇など把握するのが大変ではありましたが、それらは読み進めていくうちに自然と固まっていきました。キャラ立ちしてるってことですね。辻斬り、内容紹介にある殺人、路上での刃物振り回しなどなど、様々な事件が話の中で起こるのですが、それらの事件と登場人物が結びついていくたびに、わくわくしてしまったりして。これからどうなるのか、結末が気になって仕方がありません。下巻に続く弓之助くんの推理が楽しみです。

ばんば憑き     

ばんば憑き    


『おまえさん』下

おまえさん(下) (講談社文庫)

おまえさん(下) (講談社文庫)

父親が殺され、瓶屋を仕切ることになった一人娘の史乃。気丈に振る舞う彼女を信之輔は気にかけていた。一方、新兵衛の奉公先だった生薬(きぐすり)問屋の当主から明かされた二十年前の因縁と隠された罪。正は負に通じ、負はころりと正に変わる。平四郎の甥っ子・弓之助は絡まった人間関係を解きほぐすことができるのか。
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784062770736


 上巻で盛り上がったまま、下巻で謎解き。わくわくしながら読みましたが、今まで出てこなかった名前にちょっとぽかんとしてしまいました。が、おもしろかった! 世間は狭いというかなんというか、縁は思わぬところで繋がっているものですね。
 上巻で出てきたたくさんの登場人物たちの伏線はどうなるのだろうと思ってましたが、続く短編でそれぞれ掘り下げられていました。おでこの母親の話に、富札をあてた男の話に、夜鷹の話、主に恋をする女中の話とそれぞれオチをつけた上で、中心の事件のオチへという流れ。中心の事件のオチはなんともやりきれない感じに終わったけど(人間の業の深さを思い知らされるというか)、ラストは結構好きな感じでした。物語の余韻を残しつつも、明るい感じで。

 下巻の短編で印象が変わったのは、おでこの母親のおきえでした。最初はなんだかとんでもない人だなー、とあまり良い印象じゃなかったんですけど、これがなかなか強かな人で。おでこ、こと三太郎のこともわかってよかった。あと、弓之助の兄の淳三郎も結構好きです。軽薄そうに見えて、根っこの部分はしっかりしてるところとか。十徳長屋の丸助とのやりとりも良かった。丸助おじいちゃんはちょっと可愛く感じる。しんみりしつつも温かい話でした。