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高田郁『今朝の春 みをつくし料理帖』

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装画:卯月みゆき

月に三度の『三方よしの日』、つる家では澪と助っ人の又次が作る料理が評判を呼び、繁盛していた。そんなある日、伊勢屋の美緒に大奥奉公の話が持ち上がり、澪は包丁使いの指南役を任されて――(第一話『花嫁御寮』)。
http://www.kadokawaharuki.co.jp/book/detail/detail.php?no=3687


 みをつくし料理帖の4作目です。このシリーズの感想を書くと必ず書いてしまうのですが、相変わらず料理がおいしそうでした。(この本をきっかけに最近料理の描写がある本をよく探してしまう)

 澪の胸に秘めた小松原への恋、野江ちゃんとの友情、おりょうさん一家の家族愛(主に伊佐三さん)…いろんな愛がつまった回でした。ちょっと泣きそうになりました。人情ものに弱いんです。
 このシリーズの終着点のことはあんまり考えてなかったのですが、野江ちゃんの身請けがそれになるんでしょうか。途方もない話ですが、再会を夢見ることすらできない感じではあったので、少しは光が見えたのでしょうか。しかし、その身請け話を出したのが清右衛門ってのがちょっと意外だったり。でもこの人、口は悪いし態度もアレですが悪い人ではないですよね。

 ラストの話での澪のケガにはどきりとさせられました。料理人としては迂闊だったとしかいえないけど澪も人の子だし仕方ない。最悪の事態にはならなくて良かった。登龍楼との料理勝負は残念な結果となったけど、あんまり負けたって感じはしなかった。つる家にはたくさんの温かいお客さんたちがいるし、これからもこの調子でがんばってほしい。りうさんの「見返りを求めず、弛まず、一心に精進を重ねること」が大事というアドバイスが胸にしみました。りうさんは本当に良いキャラだなあ。

 

内容
 花嫁御寮――ははきぎ飯
 友待つ雪――里の白雪
 寒紅――ひょっとこ温寿司
 今朝の春――寒鰆の昆布締め