文字を食べる

読書の備忘録ブログです。

宮部みゆき『ばんば憑き』

  当サイトの記事には、広告・プロモーションが含まれます

 

湯治旅を終えた若夫婦が、帰途、雨で足止めとなり老女との相部屋を引き受けた。老女が語り出す50年前の忌まわしい出来事とは。「〈ばんば〉とは恨みの念を抱いた亡者のこと…」。ぞくりと怖く、心騒がす全6話。
https://www.kadokawa.co.jp/product/201008000094/


 どの話にも怪談要素があって、思わずぞっとしてしまうようなものもあるんですが、その一方でどれも温かくて切なく感じました。表題作になっている「ばんば憑き」は若干違うような気もしますが。「博打眼」「討債鬼」や「野槌の墓」なんかを読むと真に恐ろしいのはやはり人間だよなあとも思う。そういえば、「討債鬼」読んでて、デジャヴを感じたんですが、『あんじゅう』に登場した若先生だったんですね。あの若先生にこんな壮絶な過去があったと思うと、驚きというかなんというか。他にも別の作品で登場していたキャラが出ていたりするみたいですね。そちらの作品もまた機会があったら読んでみたいものです。

 個人的に「博打眼」が好きです。「博打眼」が出来たきっかけは恐ろしいし、悲しくもあるんですが。欲だのなんだのが複雑に絡み合っている中で、幼い少女の無邪気さが救いになっているというか。まあ、ただ狛犬と少女が寄り添う描写なんかが可愛らしかっただけとも言えるけど。最後の「野槌の墓」も好きな話です。ラストシーンの送り火のところはちょっと涙腺にきましたね。お玉も粋(?)な計らいをするなあ。どの話も良かったです。

 

内容
 坊主の壺
 お文の影
 博打眼
 討債鬼
 ばんば憑き
 野槌の墓

 

★ノベルス版(新人物往来社