文字を食べる

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万城目学『プリンセス・トヨトミ』

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会計検査院の調査官3人と大阪下町育ちの少年少女。彼らがたどり着いた、大阪の歴史に眠る秘密とは?
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167788025


 会計検査院についての知識がないからか、聞きなれない言葉だったからなのか、読んでもなかなかピンと来るものがなく、読むのに時間がかかってしまいました。事が起こる中盤までがきつかった。中学生パートは割とすらすら読めるんですが、大人パートが進まず。事が起きてからはおもしろくなって、一気に読みました。

 大阪国という国があるという設定がおもしろかった。なんかほんとにありそうで。登場キャラたちも相変わらず個性的で楽しい。名前も拘りがあっていいですよね。プリンセスはすぐにわかりました。
 大人パートも後から考えると結構好きな場面あったりするんですが、中学生パートが好きです。素直さや危うさだとかが。
 男たちが周りに必死に隠してきたこと、それに纏わる一連のエピソードが好きです。突拍子もなく、そして途方もない父の言うことをなぜ子どもは信じる気になれるのか。そんな親子の絆というものがわかるエピソードにちょっとうるっとしました。松平の父が死の間際、あれほど松平と会いたがっていたのもそのためだったんだなあと思うと寂しく切ないものがあります。また、そんな男たちを女たちも見守っていた、という後の説明もちゃんとあって、それを良かったと思う。そりゃあ男たちの動きを身近にいる女が知らないはずないですよね。支えられてるんだなあ。そういう男女の図もなかなか良いなと思う。
 爽やかな読後感でした。蜂須賀が大阪国の真実を知り、大輔や茶子にしたことを思い出した時の様子が気になります。

 

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