文字を食べる

読書の備忘録ブログです。

米澤穂信『春期限定いちごタルト事件』

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装画:片山若子
高校生が主人公

小鳩君と小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校1年生。きょうも2人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。それなのに、2人の前には頻繁に謎が現れる。名探偵面などして目立ちたくないのに、なぜか謎を解く必要に駆られてしまう小鳩君は、果たしてあの小市民の星をつかみとることができるのか? 新鋭が放つライトな探偵物語、文庫書き下ろし。解説=極楽トンボ
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488451011


 表紙のイラストがかわいくて手にとった本です。コメディタッチなライトミステリー。
 解説にも同じようなことが書かれていましたけど、ミステリーといえば連想するのは殺人事件。しかし、この作品では殺人なんていう物騒な事件は起こりません。人の死なないミステリー。いわゆる日常に転がっているような些細な謎の推理です。(なくしものを見つけたりだとか)肩の力を抜いて読むことができます。ゆるいです。

 登場人物の設定が面白いなあと思いました。小鳩君と小佐内さんがメインのキャラなのですが、2人は「小市民」を目指すべく、日々を地味に過ごしてます。だからなのか、そんな2人のもとに謎が迷いこんでくるわけです。その2人が出会った謎が短編連作型で書かれています。そして、どの話もところどころで繋がっていて、最後の話で1つの事件が解決します。それはたぶん、タイトルでもある「いちごタルト事件」。
 「小市民」に拘る2人ですが、どうしてそれに拘るのか本編を読み進めていくと少しずつですが、明らかになっていきます。といっても経緯はまだまだわかりませんし、小鳩君と小佐内さんの関係がどれくらいのものかもはっきりしてはいませんが。そのもどかしさが良いのかもしれません。

 プロローグ・エピローグの他に5つの2人の話があります。中でも「おいしいココアの作り方」が好きです。謎としてはそんな大したことはないし、事件性もないのですが、不思議とそのことについて気になるんですよね。謎として考えなければ全然気にしないようなことなのに。オチも面白かったです。なるほど! あと、ドキリとしたのは「For your eyes only」。これも難解な事件というわけではありません。ただ、最後の3行がインパクトが強かったのです。

 一応この本だけで話は完結していますが、続きが気になる終わり方です。2人の過去に一体何があったんでしょうか。どんな出会いだったのでしょうか。非常に気になります。特に小佐内さんの過去!


★コミック版