文字を食べる

読書の備忘録ブログです。

吉田篤弘『それからはスープのことばかり考えて暮らした』

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路面電車が走る町に越して来た青年が出会う、愛すべき人々。いくつもの人生がとけあった「名前のないスープ」をめぐる、ささやかであたたかい物語。
https://www.chuko.co.jp/bunko/2009/09/205198.html


 この方の本は初めて読みましたが、すごく好みでした。淡々としていて、ゆっくり時間が流れるような感じが良いです。漂う静かな空気がとても好み。登場人物にも嫌味がないし、多く語られていないので残っているちょっとした謎がまた魅力を出しているようにも感じる。突出した個性があるわけじゃないんだけど、なんか魅力的。

 オーリィ君を中心にそんなキャラたちが織り成す物語。<トロワ>のようなサンドイッチ屋さんが近所にあったらなあ。作中に出てくる料理のおいしそうなこと! スープのにおいが本からこちらにまで漂ってきそうで。ラストのレシピ「とにかく、おいしい!」という文を見て、確かにこれに尽きると妙に納得しました。

 読みやすい文章なのですぐに読めたんですが、なんだか読み終わるのが勿体無い気がしました。それから読了後は無性にサンドイッチとスープが食べたくなりました。特にスープが気になります。一体どんな味なんだろう。食べる人によって印象が変わりそうでもあります。お腹がすく本です。これからはあのスープのことばかり考えてしまいそう。

 本の装丁も素敵でした。表紙を開くのが楽しみになってしまうような。所々にあるイラストも可愛かったです。(※読んだのは単行本)


★単行本も好き。