神永学著『心霊探偵八雲』シリーズの読書記録をまとめました。9巻まで。
『心霊探偵八雲』はアニメやドラマ、舞台などいろいろメディア化されている人気シリーズ。
表紙眺めたいので文庫本、単行本両方の書影リンクを貼っています。ちなみに自分が読んだのは単行本なので、単行本の感想です。
単行本イラスト:加藤アカツキ
文庫本イラスト:鈴木康士
『心霊探偵八雲』シリーズ
『心霊探偵八雲 赤い瞳は知っている』
死者の魂を見ることができる不思議な能力を持つ大学生・斉藤八雲。ある日、学内で起こった幽霊騒動を調査することになるが……次々と起こる怪事件の謎に八雲が迫るハイスピード・スピリチュアル・ミステリ。
https://www.kadokawa.co.jp/product/200711000014/
作者がエンターテイメント性の高い作品にこだわっているそう。おもしろかったです。難しい漢字も表現もほとんどなくて、すらすらと読み進めることができました。一気に読めました。映像が想像しやすかったです。展開(犯人やトリック)などは割とすぐに読めましたがそれでも次が気になって読み進むのをやめなかったのは、キャラクターが魅力的だったのが大きいです。
霊が視える、無愛想で捻くれ者な主人公。ヒロインの晴香は普通の女の子って感じですが、どちらかというと積極的な感じでしょうか。それにしたってトラブル起きすぎですよね。八雲と関わったからですかね。それは置いといて、八雲と晴香の組み合わせは性格的に二人で丁度良い感じがします。
タイトル見て、心霊探偵ということは霊的絡みの事件だよなあ、除霊でもするのか? なんて最初は思ってたりしたんですが、全然違いました。霊が事件を起こしたわけではなく、人間が原因の事件を霊を頼りにして解決している感じ。そもそも主人公の八雲は視えるだけで、他の力を持っていません。捻くれた物言いばかりする八雲が一度漏らした「歯痒い」という台詞が彼の心情を色々物語ってるような気がします。
★単行本
★漫画版
『心霊探偵八雲2 魂をつなぐもの』
恐ろしい幽霊体験をしたという友達から、相談を受けた晴香は、八雲のもとを再び訪れる。そんなとき、世間では不可解な連続少女誘拐殺人事件が発生。晴香も巻き込まれ、絶体絶命の危機に――!?
https://www.kadokawa.co.jp/product/200803000542/
前回は1冊の本に3編の話が収録されていましたが、今回は1冊に渡り1編の話が書かれています。短編集もいいけど、やっぱり長編は読みごたえありますね。前作と変わらず、読みやすくすらすら読めました。
今回は長編でしたが、話の中では複数の事件が起こります。その複数の事件がひょんなところで接点を持ち、それぞれの事件を解決する糸口になっている。先の読める展開ではありますが、盛り上がるところは盛り上がって良い感じでした。晴香を助けるために八雲が川に飛び込むシーンとか。新キャラの石井刑事も体張って頑張ってましたしね。彼の恋の方はまあがんばれ……って感じですが。望み薄ですよね。晴香の自覚が思ったより早いような気がしたんですけど、前回の事件から4ヶ月も経ってるし、あれだけ大変なことに関わってるんだし、妥当なのかもしれない。八雲と晴香のコンビ好きだなあ。
新たに出てきた八雲の父親のことも気になりますが、個人的には後藤刑事の奥さんが気になります。交換日記だなんて、晴香じゃないけど可愛いって思っちゃいます。八雲は後藤刑事の奥さんとのあれこれの情報をどこから仕入れてくるんですかね。
『心霊探偵八雲3 闇の先にある光』
「飛び降り自殺を繰り返す女の霊を見た」という目撃者の依頼で調査に乗り出した八雲の前に八雲と同じく”死者の魂が見える”という怪しげな霊媒師が現れる。なんとその男の両目は真っ赤に染まっていた!?
https://www.kadokawa.co.jp/product/200803000543/
事件の真相が知りたくて、やっぱりすらすら読めました。面白かったです。
今回も大体のことは読めたのですが、所々のトリックには驚かされたりもしました。推理ものは読者も一緒になって考えることができるから楽しい。随所にあるヒントのうちの一つで薄々勘付いてはいたけど、警察関係者も事件に関わってたなんて。後藤刑事大活躍でした。後藤の額に刺さった井出内の前歯とその後の後藤のそれに対する対処の提案には笑いました。接着剤はまずい!
といったように、笑いも随所にありましたが、今回の事件はなんというか微妙な気持ちになりますね。過ぎたことを嘆いても何にもならないけど、かといって身に覚えの罪を着せられたり、ちゃんとしていれば起こらなかったはずの事に巻き込まれて被害者になったりと、一人が自分のために走った(といっても実際はそれも誰かのためだったみたいだけど)せいで色んな人が人生を狂わされてしまった。そう思うと、なんだかやりきないというか、やっぱり微妙な気持ちに。今回の事件を計画した人が最後に焼身自殺をしたけれど、後藤は相当堪えたんだろうなと思う。八雲も色々思ってるところがありそう。
巻末の後書きで作者が登場人物たちの成長について書いてましたが、1巻のこと考えてみると、ほんとに皆少しずつだけど変わってるような気がしますね。八雲もなんだか取っ付きやすくなってる感じするし。まあ、実際は微々たる変化なんだろうけど。今後の彼らの活躍に期待。
そして今更ですが、表紙の八雲かっこいいですよね。前の裏表紙の晴香も感じよくて可愛かったです。
『心霊探偵八雲4 守るべき想い』
逃亡中の殺人犯が左手首だけを残し、骨まで燃え尽きた異常な状態で発見された。人間業とは思えないその状況を解明するため、再び八雲が立ち上がる! 「人体自然発火現象」の真相とは?
https://www.kadokawa.co.jp/product/200808000489/
3巻の時点で既に変わってきてるなあとは思ってましたけど、八雲の優しさが目立ってきました。幼い頃の自分に似ている真人に対する八雲の優しさは、晴香に対するそれとどこか違うように思う。
今回の事件の核にもなる「人体自然発火」。色々と興味深くもあり、恐ろしくもあります。いつも割りとぼろぼろな感じの後藤刑事たちですけど、今回はほんとピンチって感じでした。腹刺された件はひやひやしました。無事、だとは言えないかもですけど、とりあえずラストにはいつもの刑事って感じだったので、ほっとしました。4巻はそれほど心霊絡みって感じはしませんでしたが、謎の人物の登場や、八雲の過去に触れる伏線が出てきたりと奥深い内容でした。
『心霊探偵八雲5 つながる想い』
15年前に起きた一家惨殺事件。逃亡中だった容疑者が、突然姿を現した!? そして八雲、さらには捜査中の後藤刑事までもが行方不明に――。冬とともに八雲に最大の危機が訪れる。
https://www.kadokawa.co.jp/product/200808000490/
前回のもちょっと厚めになってたみたいですが、5巻も見ただけでページ数が多くなってることに気付けるくらいの厚さでした。読み応えもあります。何巻だったか曖昧なんですが(序章だったように思う)、晴香の母の思い出の伏線の回収もされて、思わぬところでの八雲と晴香の繋がりに驚いたものです。出逢うべくして出逢った、みたいに晴香も言ってましたけど、ほんと劇的だと思う。
八雲と後藤刑事がピンチになったことから、晴香と石井がとった行動は勇気のあるもので、特に石井刑事は今までが今までだっただけに見直しました。まあ、無謀ともとれるけども。晴香はあれです。愛だね、愛。まあ、ともかく無事で何より。後藤刑事は前回といい、踏んだり蹴ったりですね…。
『心霊探偵八雲6 失意の果てに』
”絶対的な悪意”七瀬美雪が逮捕され、平穏が訪れたかに思えたのもつかの間、収監された美雪は、自ら呼び出した後藤と石井に告げる――私は、拘置所の中から斉藤一心を殺す……八雲と晴香に最大の悲劇が!?
https://www.kadokawa.co.jp/product/200905000528/
文庫だと上下にわかれてるんですね。
八雲の6巻! 今までぼかされて書かれてたキャラが一挙に動き出したって感じで、あのキャラのあんなことやこんなことがわかって面白かったです。薄々感づいてはいたけど、八雲の父親の正体にも少し驚いたりして。後藤さんの奥さんがまともに登場したのも今回が初な気もしますが、今後あの夫婦はどうやってくんだろうか。事件のあとの後藤刑事の真摯な申し出(奈緒の引き取りの件)に対する八雲の答えにちょっと笑ってしまいました。「後藤さんと家族になっちゃうじゃないですか」嫌そうにってあったけど、この嫌味は普通の嫌味とはなんか違う気がします。
今回の事件の結果はとても悲しいもので、ラストの本当の別れの場面ではうっかり泣きそうにもなりましたが、失ったものばかりでもないと思う。1巻から6巻にかけて、徐々に近づいてきた八雲と晴香の距離ですが、今回はまたぐんと縮まってました。あの八雲が人前で嗚咽漏らすとか! 心開いたって感じですかね。
『心霊探偵八雲 SECRET FILES 絆』
それはまだ、八雲が晴香と出会う前の話――クラスで浮いた存在の少年・八雲を心配して、八雲が住む寺にやってきた担任教師の明美は、そこで運命の出会いを果たすが!? 少年時代の八雲を描く番外編。
https://www.kadokawa.co.jp/product/200808000491/
相変わらず読みやすい。今回は番外編。八雲が晴香と出会う前の話で、今まで本編の方でもちらりと出てきてたように思うんですが、八雲が変わるきっかけを作った人との話がメインでした。
なんというか本編でも初期はツンツンしてましたけども、外伝の中学生八雲はそれ以上に尖ったナイフって感じで、番外編から本編の彼を考えるとまた随分変わったもんだと思う。あの女性の存在は彼にとってそれほど大きなものになってたのだと思うと、事件の結末がやりきれないです。幸せからの絶望って…。カッター持ち出した八雲のこと思うとなんとも言えない気持ちになります。不覚にも泣けました。一心がいて良かった。
しかし、6巻の一心のあれといい、なんですか。泣かす気ですか。先生があの時無事だったら、また違ってたんだろうな。それはそうと、奈緒の母親とか諸々の事情を知って色々驚きました。こういう経緯で家族になったんですね。
『心霊探偵八雲7 魂の行方』
晴香のもとにかつての教え子から助けを求める電話が!? 一方、七瀬美雪を乗せた護送車が事故を起こし……事件を追い、八雲たちは、鬼が棲むという伝説が伝えられる信州鬼無里へ向かう。
https://www.kadokawa.co.jp/product/200905000530/
相変わらずのキャラたちで、楽しく読めました。新たに登場した晴香父の八雲に対する所業には苦笑しました。石入れちゃうやつ。
今回は以前の伏線もかねた話ですね。真人に会いに行くという約束を果たすという。きっかけが事件なのがなんともいえないけれども。
この事件では他で語られなかった八雲の父親の過去なんかも語られてますが、なんだか壮絶な過去も持っているのですね。八雲が生まれるに至った事件が起こる理由がなんとなくわかったような気がしました。自分がやられたからといって、他人にしてもいいという道理はないですが。現に八雲は復讐(八つ当たり?)なんてしてませんしね。幽霊の女性を「おばあちゃん」と呼ぶ八雲がなんだか新鮮に感じました。
八雲父の生首のところ辺りは、ちょっと想像すると気味が悪くなるんですが、七瀬美雪の生首に対する並々ならぬ執念も不気味です。大切な人だからっていうのもあるんでしょうけど、なんかすごい人だなあと思う。川に流れてしまったようだけど、生死がわからないってのもまた不気味です。石井刑事が恐怖を覚えるのも無理ないですが、今回は石井刑事がんばってました。この人、シリーズを通してほんと成長してると思う。
『心霊探偵八雲8 失われた魂』
目を覚ました八雲の側にあった、血まみれの遺体。もしかして自分が!? 混乱する八雲は、ひとまずその場を離れることに。一方、行方不明の八雲を探す後藤と晴香は、驚がくの事件に巻き込まれ!? 緊迫の第8弾!!
https://www.kadokawa.co.jp/product/201203000912/
8巻読了しました。いつにも増して厚みがあり、読み応えがありました。初っ端からの殺人事件、そこに居合わせた一部の記憶が抜け落ちている八雲、と事件の概要がわからず、意味深に始まっていく話もいつもとちょっと違った感じで面白かったです。
事件はヒントが出てからは割とわかりやすかったけど、八雲の逃走劇もスリルがあって良かったし、その物語の脇で行われている晴香や石井刑事たちによる事件の捜査も良かった。他の巻でも彼らの調査の様子は書かれてますけど、八雲抜きで自分たちで方向を考えるというのは中々ない、というか初めてのような気がして。
前回(だったかな?)で行方がわからなくなった七瀬美雪ですが、やっぱり生きてたみたいですね。普通の人ならどうにかなっちゃいそうなのに、しぶといといいますか、すごいといいますか。今回もあんな最後だったけど、次もいつもの調子で現れるんだろうなあ。今回の話でも八雲と赤い目の男との関係性がまた一つわかったわけですが、血の繋がりのあるもの同士の子供って、よく考えなくとも大変なことですよね…。八雲の幼いころ、一心が彼に言った言葉が深く感じます。
そういえば、シリーズタイトルの「心霊探偵」って言葉、以前までの話の中でも出てましたっけ? この話の中で後藤刑事が出してて、ふと疑問に思いまして。少なくとも八雲が自ら名乗るってことはなかったような。刑事やめた後藤さんですが、今後の活躍も楽しみです。(英心との「ナビがある」「使い方がわからねえ!」のやりとりがツボでした)奥さんとの仲は前よりも良くなりそうですね。仲といえば、着々と近づいている八雲と晴香ですが、今回はちょっとこっちが恥ずかしくなってしまうような部分も多かったように思います。もっと知りたい、もっと知ってほしい、ってとことか色々。クライマックス突入ということで次巻にも期待。
『心霊探偵八雲9 救いの魂』
刑事を辞め、心霊専門の探偵を始めた後藤に持ち込まれたある相談。そのころ、樹海では大学生のカップルが腐敗した遺体を発見し――!? 八雲に迫る最大の危機、物語はシリーズ最高潮のクライマックスへ!
https://www.kadokawa.co.jp/product/321404000112/
前作から間が開いてるんで、内容思い出すのに時間がかかってしまいました。読んでるうちになんとなく思い出してきました。
このシリーズは勢いがあって、さくっと読めるので好きです。今回もおもしろかった! カルト教団のとこら辺がなんかちょっとタイムリーだなあとか思ってみたり。(最近のニュース的に…)あの兄妹の関係はちょっと切ないものがありますね。
探偵やってる後藤さんがなんかすごく新鮮でした。僧侶フラグも立っているようですし、今後の活躍に期待。石井くんも随分と成長したようで。こんなキャラだったっけな? と彼に限らず考えてしまうキャラがしばしばいましたが、間も空いてるからそう思っちゃうのかな。深雪とかもうほんと色々超えてる気がするが、あの人は前からあんな感じだったようにも思う。
しかし、八雲と晴香はなんていうかもう完全に恋人同士のそれじゃないですかね。まだそこまではいかない微妙な関係って感じですけど、どうにもじれったいものがあります。もうくっついちゃえよ!
両目の赤い男については今回も少々話が出てきたけど、そろそろ詳しくやってくれてもいいような。小出しにはされてるけど、どうにも内容忘れがちで。
★舞台化
★アニメ化