文字を食べる

読書の備忘録ブログです。

アンソロジー『七つの怖い扉』

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 7名の作家によるホラー短編小説アンソロジー。ただ怖いだけじゃない! どの話も味があってよかったです。この本をきっかけに、読んでみようと思う作家さんが増えました。

迷路(阿刀田高

 不思議な井戸にまつわる話。その井戸の中に死体を捨てるといつだって何日か経つと消えていた。だけど…。母の子どもを想う気持ちってすごい。ほんとはよくないことなんだけど。最後の一文にほろりときます。

布団部屋(宮部みゆき)

 不気味な話ではあるんだけど、やっぱりその中に優しさがあると思う。家族愛。おさとのおゆうを想う気持ちがなんだか温かかった。だからこそ、化け物も手出しができなかったのですが。

母の死んだ家(高橋克彦)

 オチがいいなあと思いました。不思議とかそんなんじゃなくて、結局は無意識にやっていたということなんでしょうか。母子ともども同じようなことになってしまうなんて、ちょっと皮肉な感じもします。

夕がすみ(乃南アサ)

 よくありそうな話。だけど、ほんとにそんなことが起こってしまったら、と考えるとすごくゾッとします。お兄ちゃんはかすみちゃんのその幼いながらの残酷さというものに、ただ1人気づいてたってことですかね。最後の最後まで肯定していなかったし。

空に浮かぶ棺(鈴木光司)

 私は一番これが不気味だと思いました。妙にリアルなところとか。貞子という単語に過剰反応してしまいました。リングの映画とか、怖くて見れなかった覚えがあったので。赤ちゃんが最後にもらした笑みを想像したら寒気が…。

安義橋の鬼、人を喰らふ語(夢枕獏)

 話もそうなんだけど、雰囲気が怪談! って感じがいいと思いました。見事に嵌められました。陰陽師の言う事はちゃんと聞くものですね。

康平の背中(小池真理子)

 不気味。幽霊っぽい存在が出てくるけど、その幽霊よりも、康平の再婚した妻とその子供の方が怖い。「まんじゅう、くれえ!」とか、びっくりした。すごく気味悪い。結局なんで最後にあの男の子が出てきたのかが解らずじまい。あの子のせいで死んだってわけじゃないんだし。お父さんをとった! という思い込みで生霊になったとか? よくわからないから不気味なのかも。というか怖いからよくわからないのかも。