文字を食べる

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高楼方子『十一月の扉』

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絵:千葉文子
産経児童出版文化賞フジテレビ賞

双眼鏡の中に、その家はふいにあらわれた。十一月荘――偶然見つけた素敵な洋館で、爽子は2ヵ月間下宿生活を送ることになる。十一月荘をとりまく、個性的ながらもあたたかい大人たち、年下のルミちゃんとのふれあい、耿介への淡い恋心・・・・・・そして現実とシンクロする、もうひとつの秘密の物語。 「迷うようなことがあっても、それが十一月なら前に進むの」。十一月の扉を開いた爽子を待ち受けていたのは・・・・・・。
(引用元 https://www.fukuinkan.co.jp/book/?id=1808


 装画の千葉文子さんは著者である高楼方子さんのお姉さんらしいです。知ってから改めて見るとなんか感想です。
 優しく温かな話でした。短い期間ではあったけど、爽子が十一月荘で過ごした時間は彼女にとって何ものにも変えがたいものになったんだろう。十一月荘みたいなところ、住んでみたい。住人は皆素敵な人ばかりだし、まわりの人たちも味のある良い人ばかり。るみちゃん可愛い。読者にとってもよい妹的な。

 タイトルにもなっている「十一月の扉」は管理人の閑さんが大切にしているガラス玉の中の扉の絵のこと。「十一月には扉を開け」「どっちがいいかって迷う事があっても、それが十一月なら、前に進む」「十一月に起こることは、とにかく前向きに受け入れよう」という言葉が特に印象に残ってます。こういう考え方、いいなと思う。

 話は爽子の十一月荘での日常話と、ラピスという文具屋で買ったドードー鳥のノートに爽子が描いた童話と2つのパートが交互に書かれる形式。爽子の書くドードー森の仲間たちの話がまた彼女の身近な人をモデルにしてたりしておもしろい。実際作中で起こったことを題材にしていたりして。日常話とのリンクも良かった。ノートに書いたことに似た出来事が現実でも起こるのも不思議でおもしろい。

 作中での爽子の心の成長がよくわかりました。耿介くんへの気持ちもあまっずっぱいというか、年相応というか可愛かったです。ベッドの上でもだもだしちゃうところとか。爽子は耿介くんにドードー森の最終章を渡したんでしょうか。
 挿画も雰囲気にあってて、可愛かった。十一月に読みたい本です。

 初めて読むという方は、まずは単行本で読むことをおすすめします! 手に入れるのは難しいですが、図書館で借りられると思います。

★新潮文庫版(でも、こっちの装画も素敵だな)