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結城光流『少年陰陽師』シリーズ その3

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 結城光流著、『少年陰陽師』シリーズの読書記録、11~16巻分をまとめました。かなり古い読書記録です。これで一応ある分は終わりです。まだまだ続きが出ているようなので、また追いかけたいなあ。
 きれいな表紙が並んでいると私が嬉しいので、角川ビーンズ文庫、角川文庫、両方の書影リンクを貼っています。

 角川ビーンズ文庫 絵:あさぎ桜
 角川文庫 装画:三木謙次

少年陰陽師』シリーズ

『冥夜の帳を切り開け』

祖父・晴明の命を救おうと奔走する昌浩の前に、天狐と怪僧、ふたつの強大な敵が立ちふさがる。さらに、怪僧に狙われている中宮章子だけでなく、昌浩最愛の彰子の身にも、危機が迫っていて――!?
(引用元 https://beans.kadokawa.co.jp/product/series2/200312000042.html


 天狐編。
 それぞれが色々な想いを抱えていて、なんだかとても切なかったです。どうにもならないことだとわかっていても、やっぱりどうにかしたいんだよなあ、と。あの感じでいきますとどうにかなるんでしょうか。なってほしいものです。やっぱりじい様がいなくなるのは悲しいですから。しかし、神をも動かす人間の強い願いってすごい。

 今回も様々なピンチが彼らを襲いましたが、昌浩と彰子、清明と昌浩、清明十二神将…とその間には本当に強い絆があるんだなあと再確認しました。特に昌浩と彰子。暴走した天狐の力を抑えてしまうだなんて!
 予想していなかった思わぬハプニングにびっくりしつつも、昌浩も彰子も無事で何より! 雑鬼たちが自分がしてしまったことに対する想いにこの子たちはほんとに昌浩や彰子が好きなんだなあと思うと微笑ましくもあり、彼らが彰子を励ます姿は健気とも思えました。可愛い。名前もらえてよかったね。
 じい様の安否が気遣われます。ほんとなんとかなってほしいです。十二神将のためにも昌浩のためにも。あと、お互い危険に晒されていた状態で邂逅を果たした彰子と章子のその後にも注目したいところです。章子ちゃん、あんな2人の姿見てるなんて辛いんだろうなあ。

★角川文庫版



『羅刹の腕を振りほどけ』

天狐の力は人の身を削り、人の魂を削る――。その危険をおして離魂の術をつかった晴明は、命は取り留めたが意識を戻さず、昌浩は焦りの日々を送っていた。そんな中、怪僧・丞按は、中宮章子と彰子との関係に気づき…
(引用元 https://beans.kadokawa.co.jp/product/series2/200312000041.html


 天狐編。
 まさに怒涛の展開でした。やっと清明の命の無事も確認し、すべての鍵を握る定まらぬ星宿が誰のものかということも推理できたというのに、今度は勾陣姐さんが! いつも冷静で凶将と恐れられている紅蓮にも臆さずに対等に話していた彼女が、まさかあんなことになるなんて。大丈夫ですよね、無事ですよね。薄々感づいてはいた天一の過去話が明らかになったばかりで、この展開ですからね。また心臓をぎゅっと握られたような感じになりました。肝が冷えるといいますか。十二神将の誰かの身が生死の境目にいるとき、その痛みが皆に伝わる、というのがなんとも悲しいような切ないような気がします。

 天一の過去話は想像はついていたので驚きはしませんでしたが、前の天一の気性というか容姿についてはなんだか意外な感じでした。もう儚げなイメージがついちゃってますからね。
 過去話についてだと敵の丞按の過去話がまた壮絶でなんともいえませんでした。彼の名前は弟妹の名前をとって付けたものなんですね。過去話ではないですが、清明と若菜さんの短い逢瀬は印象的でした。十二神将たちが言う若菜さんよりも彼女は弱いように見えて強いような気がします。
 昌浩ともっくんの関係が段々向上しているように見えてよかっったんですけど、それ以上に問題は山積みですね。じい様のこともそうだけど、彰子ちゃんや章子さんのこととか。それから勾陣姐さんのことももちろん。続きが非常に気になるところです。

★角川文庫版



『儚き運命をひるがえせ』

羅刹の力と天狐の呪詛におかされた中宮の身代わりとして入内してしまった彰子。少年陰陽師・昌浩は、最愛の少女の危機を救うことができるのか!? そして邪悪な天狐・凌壽に狙われる祖父・晴明と天狐・晶霞の運命は
(引用元 https://beans.kadokawa.co.jp/product/series2/200407000233.html


 とうとう天狐編完結。清明のこととか勾陣のこととか色々と気になるところで終わってたので続きが非常に気になっていたのですが、まあ落ち着くべきところに落ち着いたというところでしょうか。最悪の事態に備えて一応心の準備はしておいたのですが杞憂に終わったようです。皆さん無事で何より。

 息つく暇もないくらいに次々と問題は起こっていきましたが、それに対処しようと奮闘する昌浩は最初の頃に比べて随分と成長したんじゃないでしょうか。彰子ちゃんとの恋も亀の歩みのようだけれども進んではいますし。「とても優しくて、とても強くて」から「脆さをいとおしいと思う」の件は昌浩にしてはすごいことを言ったなあと思います。意外でした。でも、彰子ちゃんは女の子だし確かに脆いとは思いますが、章子さんは彰子ちゃん以上に私には脆く見えました。彼女の淡い恋(のようなもの)は実らなかったけれど、彼女を見てくれる人はちゃんといるようなので安心です。

 他に印象的だったのはやっぱり前巻から気にしていた清明や勾陣のこと。晶霞と清明のやり取り、親子の絆にはほろりときました。それから勾陣ですが、ほんと無事でよかった。紅蓮が勾陣のことを「勾」を呼ぶ理由もすごく納得。彼にしかできない彼だけの役目があったんですね。先の先まで見通していた清明はすごい。慧斗という名前はなんかアレらしいんですが、響きと字の感じは好きです。

★角川文庫版



『其はなよ竹の姫のごとく』

書き下ろしの表題作ほか、左大臣のわがまま若君の護衛をするはめになった昌浩たちの奮闘記(「玄の幻妖を討て」)など、安倍三兄弟が大活躍する短編集、ついに登場!!
(引用元 https://beans.kadokawa.co.jp/product/series2/200503000692.html


 安倍家三兄弟が活躍する短編集。

玄の幻妖を討て

 安倍家3兄弟が活躍する話のその1です。本編でも昌浩の兄貴ズは出てきてますけど、やっぱり番外編なだけあって濃く書かれています。なまじ身分が高いためにどうしようもない我侭な鶴君にはため息ものでしたけど、昌浩のあの一喝はよかったですね。家族を大切にする子は好きです。大体、助けてもらったのに恩を仇で返すように傷つけるなんて人として問題ありますもんね。
 「ありがとう」と「ごめんなさい」が素直に言えることは良いことです。これって意外と難しい。昌浩がそれを出来るようになったのは紅蓮のおかげなんですね。

触らぬ神に祟りあり

 自業自得。その一言に尽きますね。3兄弟もご苦労様…。
 先の短編といい、なんだか横暴というか尊大というかそんな人が多いですね。守ってもらっているのに文句ばっかりだとか。しかし、相変わらず高淤の神はすごいですね。そりゃあ神様だからなんですけども。

その理由は誰知らず

 昌浩と勾陣のファーストコンタクトの話のようです。そして、次兄・昌親の一人娘のピンチ。姪にあたる梓の危機に叔父である昌浩もがんばります。この話は上2つと話のタイプが違うような気がします。兄弟の絆というものも書かれているような気がしました。
 あとは紅蓮が子どものいる邸内に入らないようにするという気遣いが優しいなあと思いました。その気遣いも自分のためだったりするのかもしれないのですが。紅蓮が子供のことを嫌い・苦手じゃなくて、嫌われたくない・嫌われるのが怖い、そんな風に思ってるんじゃないかと指摘した勾陣は紅蓮のことをよく見ているなあと思います。

其はなよ竹の姫のごとく

 成親兄の結婚秘話! 私はこれが知りたくてたまらなかった。成親の奥さんのことが。本編でも意味深に会話の中で登場してきたり、上の短編でも姪の危機をちゃんと救ってきなさい的なことを言って、夫を家から閉め出したり…。素敵な奥さんじゃないですか。芯がまっすぐといいますか。
 本編の会話の中でも、成親は身分の高い女性と結婚したというのはわかってましたけど、容姿も美しかったんですね。十二神将を見慣れている彼らにとっては特別感じるものはなかったみたいですけれども。でも、ほんとかぐや姫みたいな結婚秘話があったようで。結婚したんだから、かぐや姫にはならないんですけどね。
 名前だけ登場してた太裳のイラストが出てました。やっぱり綺麗ですね。穏やかな人柄のようです。

 3兄弟揃っての活躍が嬉しい。兄貴たち好きなので。他にも好きなキャラが出てきて個人的には大満足でした。


『いにしえの魂を呼び覚ませ』

傷を負った勾陣の静養と、世話になった道反の巫女へのお礼のため、出雲に向かうことになった昌浩たち。だがそんな折、昌浩の夢に不穏な気配が…。出雲に待ち受ける、新たな敵の影なのか――!? 待望の新章スタート
(引用元 https://beans.kadokawa.co.jp/product/series2/200508000256.html


 天狐編を読んでから、随分時間が経ってしまいました。新章開始ということで、新しい敵キャラも出てきました。かなり強いらしく、十二神将たちも大苦戦な感じではらはらしながら読みました。敵キャラのことについては名前とちょこっと紹介があったくらいで、まだベールに包まれたままなので、どんなキャラなのか非常に気になります。動物好きですし。(狼がでてくるんです!)

 あと、新章の舞台は出雲になるんですが、色々因縁があることもあって六合の出番が多めで、六合好きとしてはとてもおいしいです。元々出雲へ向かうことになったのは、天狐編で致命傷ともいえる傷を負った勾陣の静養のためだったりするのですが。みんな、それぞれの形で勾陣を身体を気遣っていて、なんだかんだいってやっぱり十二神将の絆(というのかな)は深いんだなあと思いました。

 そんな出雲の地での敵との戦いの際に静かに激昂していた六合が印象的な回でした。風音はもう亡くなっているけれど、ずっと想ってるんだなと思うととても切なかったです。風音の魂がまだ地上に残っていて、それはこの地で最も信用のおける場所にある、と微笑む道反の巫女の台詞もまた印象に残っていて、その場所が後にどこか分かったときはすごく納得しました。確かにあの場所は信用できる、と。六合が大切に持っている赤い勾玉の秘密には驚愕でした。嬉しい展開です。強い想いは奇跡を起こすというか。次の展開が気になります。


『妙なる絆を掴みとれ』

風音の体と霊力を乗っ取った真鉄は、瀕死の昌浩を連れ去った。“風音”を攻撃することができず、重傷を負った紅蓮達、神将も、戦う力を失ってしまう。道反の聖域で事態を知った晴明は――!?
(引用元 https://beans.kadokawa.co.jp/product/series2/200603000461.html


 六合、勾陣と、好きなキャラがたくさん動いていた回でした。六合と風音、紅蓮と勾陣のコンビ好きとしては色々とおいしかったです。

 まず、六合と風音ですが、この回のラストが大変なところで終わってしまいまして。二人は一体どうなってしまったのか。朱雀が一番怖いのは伸ばした手が相手に届かないこと、だそうですが、六合はちゃんと風音の手を掴むことができたんでしょうか。しかし、彼女のお父さんは大神であってもやはり思うところはどこの父親とも一緒で思わず苦笑
 ちなみに朱雀のこの台詞、天一も回想してました。彼女は普段は待機メンバーですが、今回は昌浩のために奔走しておりました。あの衣装じゃ走るのも困難でしょうに。朱雀が襲われたことを知ったら顔を青ざめさせそう。

 紅蓮(本性)と勾陣のコンビはなんとなく大人な感じがするのですが、意外と言うべきか、結構子供っぽい言い争いもするんですね。海に沈めだの沈みたくないだの。道反の聖域の海には治癒効果があるということだから、お互い体を癒やしてほしいということなのはわかってるんですけど。でも、それにしたって、勾陣は天狐編でぼろぼろになったというのに、本調子でないこの回でもぼろぼろになってしまうなんて。無事で何より。清明も知らなかった勾陣の利き手を知っていた紅蓮には驚きでした。勾陣も自分から言ったことはないみたいなので、よく人のことを見ているんだなあと。

 この章の敵については朧げながらわかってきましたが、まだまだわからないことだらけです。彼らの目的は大分はっきりしたのですが。(荒魂とはなんなのか、とか)この話には神話に登場する名前がいくつか出てくるので、日本神話好きとしては嬉しかったりします。
 前回、酷い傷を負わされた昌浩ですが、出会った一人の少年の助けによって一命を取り留めます。そんな少年の名前は比古といって、道反の守護妖たちが山の比古(こちら側でも敵側でもない山の民)が瀕死の昌浩を見つけたらきっと助けてくれるだろう、なんて話をしていたので、てっきり昌浩があった比古はその比古だと思ったんですが。敵である珂神の名前の後にまだ続く言葉があるなんて考えようともしませんでしたよ。珂神はほんとに(見かけは)普通の少年なんだなあ。あの恐ろしく強大な力を持つ者たちの上に立つものとは考えにくい、そんな外見かと。

mogumogu101.hatenablog.com

mogumogu101.hatenablog.com



おまけ

 その昔、「少年陰陽師」を勧めてくれた友人が貸してくれた特典小説の感想。感想書いた日付を見たらすごく古かったが、面倒なのでそのまま載せます。
 文庫のどこかに収録されているかもしれない。

小説「この手が、指が。」

The Beans VOL.6 全員大サービス 『ぷち The Beans』より
 汐と玄武の話。汐というお姫様がいまいち私にはわからないのですが(まだ本編の方で読んでないのかもしれない)神様と人間という身分・立場はやっぱり大きいというか重いんだなあと思いました。見えないということが寂しい。でも、貴方のことはこの手が覚えています、という感じの話です。なんだか切なかったです。

漫画「十二神将子育て秘話」

The Beans VOL.6 全員大サービス 『ぷち The Beans』より
 安倍家の子供たちは十二神将に育てられたようです。その一コマが少年陰陽師お馴染みのあさぎさんが描かれています。相変わらず朱雀と天一がらぶらぶしておりました(笑)そんな2人に対する太陰と玄武の一言がツボです。素敵。

漫画「ある日の、市で。」

The Beans VOL.6 全員大サービス 『ぷち The Beans』より
  十二神将と市へ出かける彰子ちゃんの話。十二神将には徒人には見えないので、彰子ちゃんのために(護衛のために)色々と手助けをするのですが、その通常の人には見えない彼らのおかげで彰子ちゃんが赤の他人から見て超人となってしまう。そんなところが面白かったです。
 訳のわからん感想ですみません。

「それに名をつけるなら」

少年陰陽師×篁破幻草紙 特典小説
 作者の出している2つのシリーズのコラボ。私は「篁破幻草紙」のシリーズは読んだことないのですが、十分楽しめました。でも、知ってからの(知識があった)方が用語のこととかキャラのこととかもあるし楽しめたんだろうなあ。とりあえず昌浩と篁の性格は全然違うみたいです。
 この話は清明十二神将がまだ出会う前の話のようで、物語の中心は紅蓮でした。最初、「篁破幻草紙」を知らない私はどうにも篁の傲慢な感じの性格に馴染めなかったのですが、彼も相当な力の持ち主だったのですね。現在の紅蓮は些細な過去のことなんて綺麗さっぱり忘れているみたいでしたけど、やっぱり会えばどこかで「自分とは合わない」って思うのでしょうね。匂陣がやっぱり素敵な姉さんでした。

少年陰陽師 掌篇集

サウンドトラック&ドラマCD 少年陰陽師第一巻特典ミニ小説
 昌浩を中心とした少年陰陽師に登場するキャラの日常の一コマが綴られています。どれもすぐ読める掌編なのですが、本編の裏側や合間にこんなことがあったのかと思うと微笑ましかったり切なかったりします。もっくんにリボンをつけちゃう勇気ある彰子ちゃんに乾杯です。