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西尾維新『物語』シリーズ

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 西尾維新著、『化物語 上下』『傷物語』の読書記録をまとめました。
 
 イラスト:VOFAN

『物語』シリーズ

化物語 上』

阿良々木暦を目がけて空から降ってきた女の子・戦場ヶ原ひたぎには、およそ体重と呼べるようなものが、全くと言っていいほど、なかった――!?
(引用元 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000208722


 この作者の本を読むのはこれが初めてです。
 アニメ化されている人気作! ということで手にとったもの。人気がよくわかるおもしろさでした。一気に読みました!
 色んなところから引っ張ってきた小ネタに阿良々木同様「やりたい放題」だなんて感想を抱いたり。まあ、それが良いのですが。キャラ同士の息をつく暇もない漫才みたいな掛け合いも楽しかった。所々にある文字遊びも。日本語って面白い! 女性陣の言い間違いには、阿良々木くんがツッコミを入れなかったら流してしまいそうになったのもありました。しかし、あのツッコミ量を見ると、いつか阿良々木くんは酸欠になってしまうんじゃなかろうか。

 上巻にはひたぎクラブ」「まよいマイマイ」「するがモンキー3つの怪異の話がありますが、どれもすっきり終わっていて良かったと思う。それぞれ怪異の中心にいる女の子がいるのですが、この子たちがまた皆違うタイプで個性豊か。しいて似ているところをあげるとすると前髪がぱっつんなところくらいか。これは忍野さんの言ですけども。イラスト見ると真宵もぱっつんですよね。
 3編通して感じたのは語り手でもある阿良々木の人の良さ、優しさだったんですけど、本編中では彼のそれは甘いだけなんて言われてる場面もあったり。忍野にはけちょんけちょんに言われてたし、本人もそういうつもりはないみたいだし、むしろ捻くれてると思ってるみたいだけど(確かに右利きの人が腕時計を右腕につけるのは変わってると思う)、やっぱり根っこの部分は良い奴なんだと思う。
 今まで人を拒絶し続けたひたぎが阿良々木の話を聞く気になったのも彼の不思議な体質だけじゃないと思うし、ひたぎが彼を好きになったのも彼が阿良々木だからだったからなんだろう。と書いていてよくわからなくなったけど、まあいいか。とにかく、阿良々木は他人のために一生懸命になれる奴。本人にそういう気がなかったとしても。「まよいマイマイ」の真宵のことを何とかしてあげたいという思いで声を荒げてる場面で特にそう感じました。もしかしたら怪異限定かもしれないけれど。

 他にも印象に残ってる場面はいくつかありますが、一番強烈だったのは「ひだぎクラブ」での最初の阿良々木とひたぎの会話場面ですね。先日読んだ小説(※デュラララです)でボールペン怖ええ! と思ったばかりですが、ホッチキスも恐ろしい! ホッチキスでよもやそんな場所を綴じるだなんて発想がなかった私は思わず心の中でひええ! と叫んでしまいました。なんとなく自分の頬を撫でてしまいます。あれはきっと痛い。阿良々木だったから無事に済んだけど。
 と、こんな痛い場面が強烈に印象に残るのはしょうがないとして、印象に残る場面はまだまだあります。書き連ねるとキリがないので省きますが、ひたぎの告白シーンは良かったなあと思う。「I love you.」と英語で告白した日本の女子高生を小説の中で見たのは初めてな気がします。そして、それに対する阿良々木の返事が「戦場ヶ原、蕩れ」だったのですが、これがまた捻くれたところのある彼らしいというかなんというか。二人の間でしか通じない言葉で「好き」という気持ちを伝えたというところが良いなあと思う。なんとも二人らしい想いの伝え方だと思いました。


化物語 下』

 下巻も上巻同様、楽しみながら読めました。なでこスネイク」「つばさキャットの二つの話が収録されてます。新しいキャラが登場したり、再三阿良々木が口にしている翼と猫の怪事件の話の全容がわかったりするわけですが、他にもキャラの内面が掘り下げられてたりして、またキャラの新たな一面が見られて良かったなと思う。阿良々木と戦場ヶ原との仲もちょっと進展しましたし。「ひたぎさん」呼びは中々新鮮で、また初々しく感じました。まあ、一時の間だけだったんですけど。

 しかし、阿良々木くんは罪な男です。メインの女の子たちの矢印が皆彼にいってましたね。神原や八九寺は少し違う、というか後者には恋愛感情はなさそうですが。でも、新キャラの千石撫子(なでこって読み方は阿良々木と同じ感想持ちました)は本編中では明確には断言されてなかったけど、十中八九彼女の片思いの相手は阿良々木なんだろうなあ。で、その想い人がいるから告白されても断って、そして蛇の呪いを受ける、と。あの羽川さんも阿良々木のことが好きで、密かにその恋心を温めてきていたのに、彼が別の子と付き合うようになって……、で最終的に「つばさキャット」の事件が起きたという。
 ほんとに罪な男ですよ。誰にでも優しいってのもアレだなあとは思うけど、そんな困ってる人はほっとけない彼だから女の子たちは彼が好きなんだろうな。でも、やっぱり最終的には神原が言うように自分の彼女である戦場ヶ原をとってほしいです。それについて語る神原のシーンが妙に印象に残ってます。

 と恋愛方面のことばかりですが、コンビ的には阿良々木と八九寺の二人が一番好きかもしれないです。二人のやり取りが好きだ。阿良々木くんも楽しい的なこと言ってたような気がします。名前を間違って呼ぶ→つっこみ入れる→「かみまみた」の流れが好きなんです。何気にこのやり取り7回(!)もしてたんですね。今回も阿良々木のツッコミが冴えてて楽しかったです。なんかまだ書き足りないけどこの辺で。


傷物語

全てはここから始まる!『化物語』前日譚! 全ての始まりは終業式の夜。阿良々木暦と、美しき吸血鬼キスショット・アセロラオリオン・ハードアンダーブレードの出逢いから――。『化物語』前日譚!!
(引用元 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000208778


 相変わらずフリーダムだなあという印象。そこかしこにあるネタ、言葉遊びが面白い。もちろん内容も面白かった!
 物語の全ての始まりである、阿良々木と吸血鬼・キスショット・アセロラオリオン・ハードアンダーブレードの出会いが描かれたこよみヴァンプが収録されてるのですが、笑いとシリアスが程よいバランスをとっているような。中盤までの二人の信頼関係が微笑ましかっただけに、終盤の展開は切なかった。
 誰も幸せにならない結果になったわけですが…。阿良々木くんがハートアンダーブレードに言った「お前が明日死ぬのなら僕の命は明日まででいい――お前が今日を生きてくれるなら、僕もまた今日を生きていこう」の台詞がすべてのような気もする。これ、すごい台詞だよなあ。

 本編中でなかなかに格好良い台詞を言う阿良々木くんですが(無自覚タラシか)、それ以上にパンツパンツ言っていた印象もあります。なんというかパンツ。際どい場面もありましたが、阿良々木くんが紳士だったために委員長は守られました。まあ、ただのチキンともいえるかもしれないけれども。なんにせよ、阿良々木と委員長の友情が色々なところで窺えて良かったです。阿良々木くんが「友達になってください」って頭を下げるシーンが好きです。でもこの二人、友情・親友というよりは恋人に近いんじゃ…。なんて思う部分もあったんですけど、彼には戦場ヶ原さんなんですよね。
 『傷物語』、どうしてこのタイトルなんだろうって思ってましたが、「傷物」達の物語であり、「傷」の物語でもある、みたいなことが書かれてて、すごく納得した。こう種明かしされると、また深いタイトルだなと思う。
 他にも何か書こうと思ってたことがあったんですが、例の如くまとまらないのでこの辺で。ほんとはもっとわかりやすく簡単に書きたいんですけど。