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読書の備忘録ブログです。

ジョージ・マクドナルド『かるいお姫さま』

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絵:アーサー・ヒューズ
訳:脇明子

魔女にのろいをかけられて,ふわふわ浮いてしまうお姫さま.〈重さ〉をとりもどせるただひとつの場所,湖も,魔女のたくらみでしだいに干上がり,お姫さまは弱ってゆきます.お姫さまを救うためには,だれかの命を犠牲にしなければなりません──.表題作のほか,幻想的な「昼の少年と夜の少女」を収録しました.
(引用元 https://www.iwanami.co.jp/book/b269608.html

かるいお姫さま

 魔女の呪いのせいで、体も心も軽くなってしまったお姫さまの話。これ、おもしろい呪いですよね。かるくする、なんて。飛んだり跳ねたりな生活はほんの少し楽しそうと思ったりもしましたが、やっぱり不便なことの方が多そうですね。風が少し吹いただけでどこかへ飛ばされちゃうのだし。心も軽く…という呪いのせいでお姫さまがある意味ひどい子になってしまってましたが、そこがユーモラスでおもしろかったり。このかるいお姫さまを助けるために王子様がくだした決断、一途さには心を打たれました。

昼の少年と夜の少女

 どちらかというと表題作より、こちらの方が好み。昼の光しか知らなかった少年と夜の闇しか知らなかった少女の邂逅で動く物語。夜の少女・ニュクテリスがはじめて外の世界を見たときの風景描写がとても美しかった。月の光だとか、夜の優しい静けさだとか、いいなあと思う。ニュクテリスの純粋さからくる反応も可愛らしかった。この話も大団円で終わるのですが、後に2人が怖がっていた世界の方をより好きになったというオチがまた優しい感じがして、これもまたいいなあと思う。

 「ニュクテリス」という名前がなんだか変わっているな、と思ったので調べてみたところ、コウモリを意味する「ニュクテリス/νυκτερίς」(古ギリシャ語)を発見しました。夜の少女だし、それっぽいですね。

↓のページで確認させて頂きました。
νυχτερίδαの読み方・発音・意味|蝙蝠のギリシャ語:ネーミング辞典

★2020年11月に新たな装いで出版されているもよう。
絵の担当はモーリス・センダック