文字を食べる

読書の備忘録ブログです。

結城光流『少年陰陽師』シリーズ その1

  当サイトの記事には、広告・プロモーションが含まれます


 結城光流の『少年陰陽師』シリーズの読書記録を1~5巻分まとめました。
 表紙を並べてにやにやしたいので、角川ビーンズ文庫、角川文庫、両方のリンクを貼っています。
 角川ビーンズ文庫 イラスト:あさぎ桜
 角川文庫 装丁: 角川書店装丁室 西村弘美

『少年陰陽師』シリーズ

『異邦の影を探しだせ』

13才の昌浩は希代の陰陽師・安倍晴明の末の孫。素質は素晴らしいがまだまだ半人前の昌浩は相棒の物の怪”もっくん”と共に修行に励んでいる。そんな中、なんと内裏が炎上するという騒ぎがおこり……。
(引用 https://beans.kadokawa.co.jp/product/series2/200110000239.html

 陰陽師に関連する本といえば、友人に借りて夢枕獏さんの書いた本を読んだことがあります。それがきっかけで陰陽師に関心を持ちました。(平安時代も少し好きになりました)
 その流れで別の友人からおすすめされて読んだ、角川ビーンズ文庫から出ているこの「少年陰陽師」シリーズ、すごく面白かったです。専門用語を全然知らないって人でも十分楽しめます。

 まず登場人物が個性的というのが重要ですよね。安陪晴明の孫だと言われることを気にしている主人公だとか、物の怪だけど物の怪ではないもっくんだとか、最強のじい様とか。あの人、最強といっていいですよね。おいしいとこどり! 主人公・昌浩の「孫言うな」発言がなんか微笑ましい。
 しかし、もっくんはいいですね! 普段は可愛くてやんちゃなイメージがあるんですが(実際やんちゃか)、昌浩に危険が迫ると…。かっこいい! もっくんの昌浩に対する思いやりにはちょっと泣けます。昌浩は知らないところで色んな人の優しさに見守られながら育ってきたのですね。
 そんなしんみりとした場面とコミカルな場面が絶妙に入り混じっています。昌浩ともっくんの掛け合いが特に好き。おもしろかった!
 
★角川文庫から新装版がでているようです。和の感じが素敵な装丁!




『闇の呪縛を打ち砕け』

異邦の妖怪・窮奇一行を退治るため、毎夜都を見回る昌浩ともっくん。そんな中、昌浩にとっては鬼門である貴船神社で鬼女が丑の刻参りをしているという噂が。一方道長の娘・彰子の身にも妖の魔の手が忍びより…
(引用 https://beans.kadokawa.co.jp/product/series2/200201000063.html


 主人公の昌浩ともっくんこと紅蓮の関係がとても好き。持ちつ持たれつな仲というか、強い絆だなあと。誰にもあの絆は断ち切ることはできないと思う。特に昌浩が暴走した紅蓮を止めようとした(止めた)件は泣きそうになってしまった。またその紅蓮が暴走しちゃった理由がまた…。でも、昌浩はじい様が認めてるだけあって、ほんとに強い力を秘めているんですね。

 昌浩ともっくんの関係もそうなのですが、「少年陰陽師」は登場人物の関係がよくできているなあと思います。メインの繋がりがどれも好き。昌浩と彰子の微笑ましく、またじれったいような関係も好きですし、じい様である安陪晴明への口には出さないけど深い信頼も好きです。なんかたくさんの愛があるような気がします。というか昌浩はほんと愛されてるよなあ。あんまり意識はしてなさそうですけど。
 あと関係といえば、やっぱり昌浩と妖たちのやり取りが好きです。毎度潰される昌浩には悪いけど、あれがないとなあ。外見強そうだけど中身は臆病者(笑)な車之輔くんも例にもれず好きです。
 おもしろくて、あっという間に読めてしまいました。ぐいぐいと物語の中に引き込まれるというか、それより引っ張られる感じです。敵の力は強大ですが、昌浩もまだまだ「未熟者」でも成長はしています。今後の展開が楽しみです。

 それにしても、彰子ちゃんの手につけられた傷が心配。何か落とし穴があるような気がして、不安になる。彼女、今回の事件で変に気にしたりしないといいんだけど……真面目な子だから気にしちゃいそう。

★角川文庫版




『鏡の檻をつき破れ』

異邦の妖怪窮奇がついに都人を襲い始めた。さらに藤原道長の娘・彰子の入内が決定し彼女にかけられた呪詛が発動してしまう。入内話にショックをうけつつも、安倍晴明の孫・昌浩は彰子を救うため窮奇に立ち向かう!!
(引用 https://beans.kadokawa.co.jp/product/series2/200203000518.html

 前巻で彰子ちゃんの手の甲に付けられた傷のことを気にしていたんですが、あの傷はやっぱり大変なものだった! 呪詛だかなんだかそこら辺はいまいちわかってないのですが、手から噴出す瘴気って一体どんなんだろう。
 今回はその瘴気のところの件が切なかった。護るよ、と蛍を一緒に見に行こう、と約束を交わした昌浩と彰子。で、約束してまもなく彰子の入内が決まる。史実ではそうですもんね。中宮彰子、歴史で習う名前。だから、昌浩と彰子ちゃんが離れ離れになるというか、一緒にいられなくなるっていうのはわかっていたことなんです。というよりも、そういう展開を覚悟していたといった方がいいかもしれません。だからこそ、決戦前の昌浩と彰子の挨拶のシーンは切なくて感動するわけです。
 それから、昌浩が彰子の受けた呪詛を肩代わりするという(形代だっけ?)のを紅蓮に黙って行っていた、という件もなんか切なかったです。もしかしたら自分の命が危ないかもしれないのに、昌浩は自分が呪詛を受けることを選んだ。彰子が幸せになってくれればいいのだ、と。並々ならない決意だと思います。ほんと今回は切ない巻でした。

 …と2人の報われない恋(?)を思って泣きそうになった巻ですが、どうやらそうでもないようです。あの展開からいくと2人は今後も大丈夫そうですね。「?」と思う部分がなかったわけではないですが、何はともあれよかった! 今後も2人の関係が見逃せません。あとは、もっくんと青龍とか。彼(だけではないけど)、窮奇との決戦のとき昌浩のこと助けてくれましたよね。じい様の命令もあったからなんでしょうけど、どういう風の吹き回しなのだろう。他の十二神将も気になる。六合かっこいい! もっくんは相変わらず可愛くてかっこよかったです。特に六合に捕まれてる場面が可愛かったです。

★角川文庫版



『禍つ鎖を解き放て』

晴明の孫・昌浩は不穏な噂を耳にする。権力争いに敗れ大宰府に流された貴族の怨霊が、都をさ迷っていると。まともな怨霊相手の戦いは初めての昌浩は、苦戦を強いられるが…。半人前陰陽師奮闘記、怒涛の新章開始!!
(引用 https://beans.kadokawa.co.jp/product/series2/200204000215.html

 窮奇編が終わり、新たな事件の始まりを告げる第4巻。行成を呪い殺そうとする怨霊だとか清明の命を狙おうとしている女術師だとか、なにやら色々登場するのですが、新章のメインは女術師の風音でしょうか。なかなかのやり手で、なおかつ美人さん。何者かの命令を遂行しようとしていたようですが、誰からの命令だったのでしょう。そこら辺がこれからの話にも影響するのかな。風音に命令を下していると思われるその人のことを清明も知っていたようですけど一体誰なんだろう。ほんと清明は顔が広いというか、なんというか食えない人だなあ。

 新たな敵も登場したところで、新たな神将も登場。天一は前にも何度か出てますけど、ほんとに美少女だなあ! 線が細くて儚げで。それでもって、そんな彼女を物凄く大切にしている神将がいるんですから。朱雀さんはほんと天一が大切なんですね。清明の孫である昌浩を殴ってしまうくらい。それでも怒りは収まらなかったんでしょうけど…。でも、自分の大切な人がよくわからん奴のせいで重症を負うというのは気分悪いよな。
 敏次が受けようとしていた呪詛をすべて受け止めた天一。癒しもそうだと書いてあったけれど、傷を癒すのではなく自分が肩代わりするだけなのだ、という天一の能力はらしいなあとも思うけれど、同時に心配でなりませんね。朱雀が心配性(過保護?)になってしまうのも無理ないです。だけど、彼等周りが引いてしまうくらいの熱っぷり…。神々しいカップルだな。敏次さんに入る余地はないかと。
 今回は昌浩やもっくんの活躍よりも新キャラに目がいってしまう巻でした。でも、少年陰陽師の中の良い部分は何も変わっていません。妖たちは微笑ましいし(車之輔も!)、昌浩ともっくんの漫才のようなやり取りも健在。それから昌浩と彰子ちゃんも。昌浩は絶対彰子ちゃんには頭が上がらないと思う。彼女に何度助けられていることやら! そして、相変わらず六合がかっこいい! 彰子ちゃんが考えた「りっくん」という愛称、可愛くていいと思うんだけどなあ。

★角川文庫版




『六花に抱かれて眠れ』

安倍晴明の孫・昌浩は、都を徘徊する霊に遭遇する。悲痛な想いを抱える霊に、昌浩は思わず同調してしまい…。一方、謎の女術師・風音が、自分達の野望を阻むであろう昌浩の命を狙い始めて――。
(引用 https://beans.kadokawa.co.jp/product/series2/200210000159.html

 今回の内容は全体的に見た感じ、コメディというよりはシリアスの方が比重多めかも。幼い日の昌浩と紅蓮の話とか。前の巻で新たに現れた風音の話とか防人の霊が生前に誓った約束とか。六合は風音のことを気にしているようですね。晴明の命を狙った者だというのに、自分の体も省みず、化物の中に捕らわれた風音を助けたのですから。手が麻痺していても。で、化物の中から彼女を引きずり出したあとには彼女のために結界まで張ってあげてます。これは何かの始まりでしょうか! 風音も六合が触れたという右手を気にしていましたし。やっぱりこの章は風音編で良さそうですね。

 シリアスな面が多い今回ですが、コメディな部分もばっちりあります。昌浩ともっくんの漫才のような会話はもちろんのこと、雑鬼に潰される昌浩もちゃんと拝めます。これがないとやはり落ち着かないというか、少年陰陽師じゃありませんよね! なんか毎回これ書いてるような気がする…。しかも、今回昌浩が雑鬼たちに潰されるシーンが2度あります。2度目のときは流石に昌浩も学習してきたのか避けますが雑鬼たちの方が一枚上手でした。こうでなくては!
 他には敏次なんかにもまた笑わせてもらいました。果てしなく苦笑いに近いですけど。(昌浩にはいい災難だった)しかし、彼ほんとに天一が好きなんですね。朱雀には敵いっこないですが。というか、ほんと朱雀は敏次に容赦ないですよね。もっくんも結構容赦ないと思ってましたけど、昏倒まではいかないもの。

 十二神将といえば、名前だけじゃなく玄武や太陰も結構活躍。見た目は年少コンビ。微笑ましい。太陰の能力は少々荒っぽいようですが。それから、本編とは関係ないのですが、後書が素敵でした。「もっくん、きみに決めた!」ポケモン風少年陰陽師、私もうっかり空想(もとい妄想)を繰り広げてしまいました。
 昌浩のまわりのキャラの活躍も目立ってはいますが、昌浩も主人公な分たくさん活躍してますし、また成長したような気がします。本人は気づいてなかったようですが彰子と一緒に寝ちゃったりして、吉昌を驚かせたりしてますし。これからの昌浩の活躍、六合と風音、彼女のいう宗主様と清明の因縁、どれも気になります。

★角川文庫版


mogumogu101.hatenablog.com

mogumogu101.hatenablog.com